2022年のTOB(株式公開買い付け)はここまで30件(6月22日時点、届け出ベース)を数え、過去10年間で前年(37件)に次ぐ高水準で推移している。一方で、対象会社の賛同を得ずに行われる敵対的TOBは現時点でゼロ、上期だけで5件に上った前年とは様変わりだ。
こうした中、公開買付代理人の座をめぐる争奪戦に何か変化はあるのか。前半戦の証券会社別の最新ランキングを集計した。
公開買付代理人はTOBへの応募を受け付ける窓口の役割を務める証券会社をいう。買収企業(公開買付者)に代わって、買収対象会社の株券の保管・返還や買付代金の支払いなどに関する事務を担う。TOBに応募する株主は代理人の証券会社に口座を開設し、株式を移管する手続きが必要となる。
2021年のTOBは前年比10件増の70件と2009年(79件)以来12年ぶりの高水準を記録。内容的にも、TOBが不成立に終わるケースが7件とこれまでの最多となったうえ、対象企業が反対する敵対的案件も一時最多の6件(反対撤回があり、最終的に5件)に達する波乱の展開だった。
2021年の買付代理人をめぐるレースではSMBC日興証券が躍進し、年間20件と2015年(12件、野村証券と同数)以来6年ぶりの首位に立った。2020年まで3年連続トップだった野村証券は10件にとどまった。三田証券は8件中、半数の4件が敵対的TOBでの起用だった。
さて、2022年の状況はどうか。今のところSMBC日興証券と野村証券が各6件で拮抗する(一覧表)。これに大和証券5件、三菱UFJモルガン・スタンレー証券4件が続く。みずほ証券は2件にとどまり、年間11件だった前年に比べ失速が目立つ。
一方、大手証券を相手に健闘しているのが中小の三田証券で、すでに4件を数える。三田証券は敵対的TOBでの起用が多いことで知られるが、今年は敵対的案件に頼ることなく、件数を伸ばしている。
敵対的TOBで買付代理人として買収側につくと、買収対象となった企業の反発や恨みを招きかねないことから、証券会社は二の足を踏む傾向があった。これに風穴を開けたのが三田証券。敵対的案件であってもコーポレートガバナンス(企業統治)の強化につながるTOBであれば業務受託することを基本方針としている。
2022年のTOBではインフロニア・ホールディングスによる東洋建設の子会社化案件が唯一、不成立(5月)に終わっているが、このTOBでは大和証券が代理人を務めた。
◎2017年以降:公開買付代理人の証券会社別の推移(届け出ベース、2022年は6月22日現在。復代理人はカウントせず)
2017年 | 2018年 | 2019年 | 2020年 | 2021年 | 2022年 | |
TOB総件数 | 46 | 42 | 46 | 60 | 70 | 30 |
野村証券 | 8 | 11 | 13 | 21 | 10 | 6 |
大和証券 | 11 | 8 | 9 | 5 | 6 | 5 |
SMBC日興証券 | 9 | 6 | 7 | 8 | 20 | 6 |
みずほ証券 | 5 | 9 | 7 | 12 | 11 | 2 |
三菱UFJモルガン・スタンレー証券 | 3 | 2 | 2 | 7 | 5 | 4 |
東海東京証券 | 5 | 1 | 2 | 0 | 3 | 1 |
岡三証券 | 0 | 1 | 0 | 0 | 2 | 0 |
SBI証券 | 0 | 0 | 0 | 1 | 4 | 2 |
三田証券 | 3 | 3 | 3 | 4 | 8 | 4 |
その他証券 | 2 | 1 | 3 | 2 | 1 | 0 |
文:M&A Online編集部