2022年TOB、「買付代理人」レースはSMBC日興と大和証券が抜け出す

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2年連続でトップに立つか…SMBC日興証券(東京・丸の内で)

2022年のTOB(株式公開買い付け)件数が50件(届け出ベース)に達した。年間70件と12年ぶりの高水準を記録した前年と並ぶハイペースで推移中だが、公開買付代理人の座をめぐる争いではSMBC日興証券と大和証券の2社が抜け出し、野村証券など後続との差を広げる展開となっている。

大和、5年ぶりのトップをうかがう

公開買付代理人はTOBへの応募を受け付ける窓口証券会社のこと。買収者(公開買付者)に代わって、買収対象会社の株券の保管・返還や買付代金の支払いになどに関する事務を担う。TOBに応募する株主は代理人の証券会社に口座を開設し、株式を移管する手続きが必要になる。

今年50件目のTOBの届け出があったのは10月17日。持ち帰り弁当「ほっともっと」、定食店「やよい軒」を展開するプレナス(東証プライム上場)の株式非公開化を目的とする案件で、同日から買い付けが始まった。50件到達は昨年より2日早い。

プレナスのTOBはMBO(経営陣による買収)の一環として行われ、買付代金は最大598億円に上る。MBOとしては今年11件目。

この案件で公開買付代理人に起用されたのは三菱UFJモルガン・スタンレー証券。同証券として代理人を務めるのは今年6件目で、前年の年間実績5件を上回った。

2022年の代理人をめぐるレースでトップを争うのはここまで12件のSMBC日興証券と11件の大和証券。

SMBC日興は昨年20件で2015年以来6年ぶりに年間首位に立った。相場操縦事件に揺れる同社だが、代理人レースでは今年も好調を維持している。大和証券は2017年(11件)以来のトップ返り咲きをうかがう。

野村証券は2020年まで3年連続で年間トップだったが、昨年、今年と低空飛行が続いている。昨年まで2年連続で年間10件を超えていたみずほ証券も目下、4件にとどまる。

三田証券、大手に伍して6件

大手勢を相手に気を吐いているのは三田証券。野村、三菱UFJと並んでここまで6件を数える。三田証券は対象会社の賛同を得ずに行われる敵対的TOBでの起用が多いことで知られるが、今年はその有無にかかわらず、件数を伸ばしている。

2022年のTOB戦線では昨年、一昨年と各5件に上った敵対的TOBが今のところゼロで、昨年8件あったTOB不成立も1件にとどまり、平穏に推移している。

こうした中、三田証券が買付代理人を務めた案件の一つが食品宅配大手のオイシックス・ラ・大地が8月末に始めた給食大手のシダックスに対するTOB。シダックス取締役会の反対で、一時、敵対的TOBに発展していたが、シダックスが反対を取り下げ、「敵対的」状況が解消された経緯がある(買付期間は10月24日に終了)。

全50件のTOBのうちMBOで株式非公開化を目指す案件は現在11件あるが、SMBC日興が鴨川グランドホテル、シノケングループなど4件で代理人を務め、MBO関連でも強みを発揮している。

◎2017年以降:公開買付代理人の証券会社別の推移(届け出ベース、2022年は10月24日現在。復代理人はカウントせず)M&A Online編集部調べ

2017年 2018年 2019年 2020年 2021年 2022年
TOB総件数 46 42 46 60 70 50
SMBC日興証券 9 6 7 8 20 12
大和証券 11 8 9 5 6 11
野村証券 8 11 13 21 10 6
三菱UFJモルガン・スタンレー証券 3 2 2 7 5 6
三田証券 3 3 3 4 8 6
みずほ証券 5 9 7 12 11 4
SBI証券 0 0 0 1 4 3
東海東京証券 5 1 2 0 3
1
その他証券
2
2 3
2
3 1

文:M&A Online編集部