◆件数
2019年第4四半期(10-12月)の完了ベースでのTOB件数は、前年同期と同じ14件。一方、届出ベースでのTOB件数は17件で、前年同期より2件(13.3%)増加した。届出ベースでの増加は2年ぶり。2019年通年(1-12月)に占める第4四半期の完了ベースでの件数シェアは34.1%(前年同期比3.7ポイント増)。届出ベースでの件数シェアも36.9%(同1.2ポイント増)と、完了・届出ともに前年を上回った。
◆金額
2019年第4四半期の買付総額は完了ベースで6038億円と、前年同期の3989億円を51.3%も上回った。100億円を超える案件が5件、うち1000億円超の大型案件が2件と前年同期と同じだったが、ZホールディングスによるZOZOに対するTOB(4007億円)が全体の金額を押し上げた。平均買付総額も431億円と前年同期の284億円を51.7%上回っている。
◆MBO案件
2019年第4四半期のMBO案件は届出ベースで2件。前年同期を1件上回った。全体の11.7%(前年同期比5.1ポイント増)だった。
◆プレミアム
2019年第4四半期の総プレミアム平均は34.27%(同7.62ポイント増)、ディスカウントを除くポジティブプレミアムは40.36%(同3.36ポイント増)と、いずれも増加。ディスカウントTOBは5件と前年同期よりも2件増加した。
◆件数
2019年通年(1-12月)の累計件数は完了ベースで41件(同4.6%減)と前年を2件下回った。届出ベースでは46件(同9.5%増)と前年を4件上回っている。
◆金額
1000億円を超える案件は前年を2件下回る4件にもかかわらず、買付総額は1兆5296億円(同34.1%増)と大幅に伸びた。買付総額のトップはソフトバンクグループ子会社のZホールディングスによるZOZOに対するTOBの4007億円。前年トップは同じくソフトバンクグループ子会社のソフトバンクを通じてヤフー(現・Zホールディングス)をTOBした2210億円だった。
◆MBO案件
2019年通年のMBO案件は6件。前年より3件増えて、2倍になった。
◆プレミアム
2019年通年の総プレミアム平均は32.52%、ポジティブプレミアム平均は36.24%。最も高いプレミアムがついたのはNTTデータによるネットイヤーグループに対するTOBの98.6%。前年2件あったプレミアムが100%を超えた案件はなかった。
届出ベースでは年間累計件数は60件以上をキープした2007-2009年、50件前後だった2010-2013年に続き、2014年に34件に落ち込んだものの、2015年以降は40件台で推移している。
図表1 .TOB件数の推移(届出ベース)
図表2.TOB件数の推移と成否(完了ベース)
買付総額は3年連続で増加し、1兆円を超える水準で推移している。2010年以降では最高で、初めて1兆5000億円を突破した。
図表3.TOB買付総額の推移
・公開買付案件の成立金額の年度別合計
・集計は完了年度ごとに集計
・進行中の案件(2件)は除く
図表4.2019年買付総額ランキング
順位 | 対象企業 | 買付者 | 買付総額(百万円) |
---|---|---|---|
1 | ZOZO | Zホールディングス | 400,737 |
2 | 田辺三菱製薬 | 三菱ケミカルホールディングス | 396,684 |
3 | クラリオン | エナップ シス エスエーエス(フォルシアグループ) | 134,248 |
4 | 東芝プラントシステム | 東芝 | 118,123 |
5 | カブドットコム証券 | LDF合同会社(KDDI) | 70,715 |
M&A Online編集部作成
経営陣による買収(MBO)は、2000年代後半から2010年代初めにかけて盛り上がり、リーマンショックによる金融危機が起きた2008年16件→09年18件→10年13件→11年21件→12年9件→13年10件と推移し、以降は6件~3件。ピーク時の2011年は全TOB(株式公開買付け)の3分の1以上をMBOが占めた。2019年は前年の2倍の6件となり、2020年は2013年以来となる10件超えが実現するか注目される。
2019年に話題となったMBOは、オーシャン・ホールディングスによる沖縄を基盤とするビール製造のオリオンビール買収案件。沖縄県内市場での営業体制の再強化や海外市場での販路拡大などの経営刷新を図るため、沖縄県内にいる605人の個人株主から株を買い取った。
図表5.MBO件数推移(届出ベース)
図表6.2019年のMBO案件
対象企業 | 買付者 | 成否 |
---|---|---|
オリオンビール | オーシャン・ホールディングス | 成立 |
エヌ・デーソフトウェア | ジェイ・ケイ・イー | 成立 |
マイスターエンジニアリング | MEホールディングス | 成立 |
フジコー | HOP | 成立 |
フーマイスターエレクトロニクス | TMK | 成立 |
廣済堂 | BCJ-34(ベインキャピタル) | 不成立 |
M&A Online編集部作成
2019年に話題となった敵対的TOBは旅行大手のHIS(エイチ・アイ・エス)によるオフィスビル賃貸事業とビジネスホテル事業を手がけるユニゾホールディングス(HD)に対するTOB。その後、ソフトバンクグループ系の米投資会社フォートレス・インベストメント・グループ傘下にあるサッポロ合同会社がホワイトナイト(白馬の騎士)としてTOBを名乗り出たが、米投資会社のブラックストーンをはじめ国内外の投資ファンドや事業会社から好条件での買収提案があり、ユニゾHDが翻意した。
最終的には従業員と米投資ファンドのローン・スターが出資する新会社がユニゾに対してTOBを実施する従業員による買収(EBO=エンプロイー・バイアウト)を実施。現在もフォートレスによるTOBとEBOが同時進行する異常事態となっている。
図表7.敵対的TOBの件数推移と成否(届出ベース)
プレミアムの傾向は2019年は26%から42%の間で推移している。2015年第3四半期の56.27%をピークに40%前半を超えないレベルで推移している。
図表8.平均プレミアムの推移(ディスカウントプレミアムを除く)
図表9.買収プレミアムの水準分布
図表10.買収プレミアム ベストランキング
順位 | 対象企業 | 買付者 | プレミアム |
---|---|---|---|
1 | ネットイヤーグループ | NTTデータ | 98.6% |
2 | ポラテクノ | 日本化薬 | 88.1% |
3 | UMNファーマ | 塩野義製薬 | 65.7% |
図表11.買収プレミアム ワーストランキング
順位 | 対象企業 | 買付者 | プレミアム |
---|---|---|---|
1 | ぱど | 畑野 幸治(個人) | ▲15.6% |
2 | アイスタディ | カイカ | ▲12.0% |
3 | 日本アビオニクス | NAJホールディングス(日本産業パートナーズ) | ▲1.2% |
【ご利用上の注意】
・2020年2月20日現在のデータです。
・自社株TOBは集計対象に含んでおりません。
・プレミアム算定に採用している株価は特に断りがない限り、公表日前3カ月平均株価(終値)としております。
・本レポートに掲載されております情報は、内容及び正確さに細心の注意をはらい、万全を期しておりますが、人為的なミスや機械的なミス、調査過程におけるミスなどで誤りがある可能性があります。M&A Online(運営会社:株式会社ストライク)は当該情報に基づいて被ったいかなる損害についても一切の責任を負うものではありません。
データ・文:M&A Online編集部