【年間レポート】2018年 TOBプレミアム分析

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1.「2018年4Q」TOB総評

◆2018年第4四半期(4Q、10-12月)の完了ベースでのTOB件数は14件。前年同期比で1件(6.6%)減少した。一方、届出ベースでのTOB件数は15件。前年同期比で3件(16.6%)減少した。2015年、2016年の14件とほぼ同水準であり、2007年からの12年間の平均が17.1件であることを考慮すれば、特に少なかったわけではない。

◆2018年通年(1-12月)に占める4Qの完了ベースでの件数シェアは30.4%(前年同期比8.0ポイント減)。一方、届出ベースでの件数シェアは35.7%(同5.2ポイント減)と前年同期を下回ったものの、18年4四半期中では最大だった。4Qの件数シェアが年間トップだったのは3年連続。テールヘビーの傾向が続いている。

 ◆4Qの成立金額ベースでは3989億円と前年同期の4409億円を9.5%下回った。100億円を超える案件が5件と前年の7件を下回ったが、前年は0件だった1000億円超の大型案件がNTT-SHによるエヌ・ティ・ティ都市開発の買収(1540億円)と米ジョンソン・エンド・ジョンソンによるシーズ・ホールディングス(ドクターシーラボ)の買収(1180億円)の2件あり、平均買付総額は284億円と前年同期の244億円を16.3%上回っている。

◆4QのMBO案件は1件と前年同期の1件と同じ。全体の6.6%(前年同期比10.0ポイント減)だった。

◆4Qの総プレミアム平均は26.65%(同0.51ポイント減)、ポジティブプレミアムは35.76%(同3.85ポイント減)に減少している。ディスカウントTOBは3件と前年同期の4件よりも減少した。

2.「2018年 年間」TOB総評

◆2018年通年の累計件数は完了ベースで前年比7件増の46件(17.9%増)と大幅に伸びた。届出ベースでは前年比2件減(4.5%減)の42件と、4年連続で40件台で推移しており、大きな変化は見られない。買付総額は1兆1398億円で、前年を451億円(前年比4.1%増)上回った。

◆2018年通年で1000億円を超える案件は6件と前年(2件)の3倍に。大型案件は増えたものの、件数増により成立金額ベースでの平均買付額は247億円と前年同期を33億円(11.78%)下回っている。買付総額のトップはソフトバンク<9434>によるヤフー<4689>買収(2018年8月8日完了)の2210億円。

◆2018年通年のMBO案件は3件と前年と同じ。TOB全体の6.5%(前年比1.1ポイント減)を占めた。最高額は桑山の51億3485万円。

◆2018年通年の総プレミアム平均は26.65%(同0.51ポイント減)、ポジティブプレミアム平均は35.76%(同3.85ポイント減)と、いずれも前年を下回った。ポジティブプレミアム平均は過去7年間で最低水準となっている。最も高いプレミアムがついたのは、北川工業(買い手=日東工業)の165.5%。プレミアムが100%を超えたのは、同社を含めて2社だった。

3.TOB件数の推移(2007-18年)

図表1 TOB件数の推移(届出ベース)2019年1月15日現在

◆届出ベースでは年間累計件数は60件以上をキープした2007-2009年、50件前後だった2010-2013年に続く40件前後の15年以降の流れのままだ。2019年は世界景気の後退も予想されており、40件前後を保つのかそれとも減少に転じるのかが注目される。今後、景気後退が明確になれば、30件台を下回る可能性もある。

*「TOB件数の推移」の本文ならびにグラフは、従来の届出ベースから完了ベースへ変更しました。

4.TOB総額の推移(2007-18年)

図表2 TOB総額の推移(完了ベース)2019年1月15日現在

・2007年~2018年までの公開買付案件の成立金額の年度別合計
・集計は完了年度ごとで金額は成立金額ベース
・進行中の案件(1件)は除く

5.2018年 全MBO案件

図表3 全MBO案件 2019年1月15日現在

公表日 対象企業 買付価格(円) 3ヶ月平均株価(円) 3ヶ月平均プレミアム(%) 状況 買付総額
2018/2/15 マルマン 295 211 39.81 成立 9億3367万円
2018/9/3 桑山 790 632 25.00 成立 51億3485万円
2018/11/6 一六堂 515 378 36.24 成立 29億2398万円

M&A Online編集部作成

6.2018年の主なTOB(抜粋)

図表4 主なTOB案件 2019年1月15日現在

公表日 対象企業 買手企業 コメント
2018/7/11 ヤフー ソフトバンク ソフトバンクグループ傘下企業間のグループ内TOB
2018/7/17 ユニー・ファミリーマートホールディングス 伊藤忠リテールインベストメント合同会社 伊藤忠のユニーファミマHDへの出資比率が50.1%となり、連結子会社に
2018/8/7 D.A.コンソーシアムホールディングス 博報堂DYホールディングス D.A.コンソーシアムはネット広告会社で、博報堂DYHDの孫会社。TOBで完全子会社に
2018/10/26 大京 オリックス ともに不動産事業を手がけているが、強みを持つ分野で重複しておらず、完全子会社化によって総合不動産グループを目指す


7.買収プレミアム(TOB)の推移(2007-18年)

◆平均プレミアムは2009年1Qをピークに減少が続いている。件数が増えれば平均プレミアムも上昇する傾向がある。

図表5 TOB件数と平均プレミアムの推移(ディスカウントTOBを除く、届出ベース)2019年1月15日現在

8.買収プレミアム(TOB)の水準(2010-18年)

図表6 買収プレミアムの水準分布(完了ベース) 2019年1月15日現在

図表7 買収プレミアムの推移(完了ベース)2019年1月15日現在

プレミアム平均の推移 2012年 2013年 2014年 2015年 2016年 2017年 2018年
総プレミアム平均 45.00% 31.30% 25.40% 29.20% 26.36% 27.16% 26.65%
ポジティブプレミアム平均 51.20% 48.40% 36.70% 39.90% 40.85% 39.61% 35.76%

9.買収プレミアム 年間ランキング2018

図表8 買収プレミアム年間ランキング2018 2019年1月15日現在

順位 公表日 対象企業 買い手 プレミアム(%) 買付価格(円) 3ヶ月平均株価(円)
1 2018/11/6 北川工業 日東工業 165.5 3,943 1,485
2 2018/7/25 アーバンライフ 三菱地所 139.4 2,415 1,009
3 2018/9/25 アクリーティブ 芙蓉総合リース 56.6 415 265
4 2018/10/31 セプテーニ・ホールディングス 電通 53.9 260 169
5 2018/2/7 テクニカル電子 大和リース 42.7 3,300 2,312
6 2018/2/15 マルマン マルマンコリア 39.8 295 211
7 2018/2/8 川崎化成工業 エア・ウォーター 38.8 340 245
8 2018/11/5 ダイベア ジェイテクト 38.4 1,410 1,019
9 2018/8/6 三井ホーム 三井不動産 38.2 980 709
10 2018/10/16 エヌ・ティ・ティ都市開発 NTT-SH株式会社 37.8 1,680 1,219

10.買付総額 年間ランキング2018

図表9 買付総額年間ランキング2018 2019年1月15日現在

順位 公表日 対象企業 買い手 買付総額
1 2018/7/11 ヤフー ソフトバンク 2210億4000万円
2 2018/10/16 エヌ・ティ・ティ都市開発 NTT-SH株式会社 1543億1552万円
3 2018/2/21 三菱自動車工業 MAI株式会社 1200億866万円
4 2018/7/17 ユニー・ファミリーマートホールディングス 伊藤忠リテールインベストメント合同会社 1196億8440万円
5 2018/10/29 シーズ・ホールディングス(ドクターシーラボ) ジョンソン・エンド・ジョンソン 1180億2911万円
6 2018/8/7 D.A.コンソーシアムホールディングス 博報堂DYホールディングス 1058億6480万円
7 2018/10/26 大京 オリックス 627億3860万円
8 2018/5/11 東洋鋼鈑 東洋製罐グループホールディングス 343億4005万円
9 2018/8/6 三井ホーム 三井不動産 250億276万円
10 2018/11/7 エナリス KDDI 208億2804万円

【ご利用上の注意】
※自社株TOBは集計対象に含んでおりません。
※プレミアム算定に採用している株価は特に断りがない限り、公表日前3ヶ月平均株価(終値)としております。 
※本レポートに掲載されております情報は、内容及び正確さに細心の注意をはらい、万全を期しておりますが、人為的なミスや機械的なミス、調査過程におけるミスなどで誤りがある可能性があります。M&A Online編集部(運営会社:株式会社ストライク)は当該情報に基づいて被ったいかなる損害についても一切の責任を負うものではありません。

文:M&A Online編集部