東京機械製作所・ニップン・みずほ銀行|今夏、思わぬ出来事に遭遇した企業3選

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東京機械製作所が本社を置くビル(東京・三田)

出口が見えない「コロナ禍」の下、史上初めて無観客開催となった先の東京五輪。24日には東京パラリンピックが同じく無観客で開幕した。ビジネス界でも今夏、思わぬ出来事に遭遇した企業がいくつかある。

「輪転機」の名門、買い占めの標的に

大規模な株買い占めが突如表面化したのは印刷機メーカーの東京機械製作所だ。アジアインベストメントファンド(東京都中央区)が同社株の8.08%を新規保有し、筆頭株主に躍り出たことが7月20日に判明。買い増しが続き、7月末には保有割合があっという間に32.72%まで達した。

アジアインベストメントは東証2部上場で投資事業のアジア開発キャピタル(旧日本橋倉庫)の子会社。アジア開発は香港を拠点とする企業グループであるサンフンカイの傘下にある。

東京機械製作所は1874(明治7)年に創業。1906年に国産初の輪転機を開発した名門で、顧客には国内主要新聞社がずらりと並ぶ。ただ、新聞各社の経営環境が厳しさを増すにつれ、売上高も減少傾向にある。

アジアインベストメントは保有目的を当初「純投資」としていたが、その後、「支配権の取得」に変更した。大量保有報告書によると、8月16日時点で保有割合は38.64%と3分の1を優に超え、株主総会で合併など重要議案の特別決議を単独で拒否できる。

東京機械は8月初めに有事対応型買収防衛策の導入と独立委員会の設置を決め、応戦の構えだ。攻防戦は秋以降にもつれ込むことになる。

サイバー攻撃にさらされたニップン

サイバー攻撃で決算報告不能に陥ったのが製粉大手のニップン。グループ内で運用する販売管理や財務会計のネットワークが攻撃され、8月初めに予定していた2021年4~6月期(第1四半期)決算発表が延期に追い込まれた。1月に日本製粉から社名変更し、新生ニップンとしてスタートした矢先だった。

不正アクセスがあったのは7月7日。バックアップを含めてデータの大部分が暗号化され、システムの起動そのものが不可能となり、早期復旧への技術的手段も確認できない前例のない状況に置かれたという。

同社によると、9月上旬までにすべての伝票入力ができる状態に戻し、10月中旬をめどに単体ベースの第1四半期決算を完了させ、その後、連結財務諸表の作成まで1カ月ほどかかる見通し。上場企業では昨年、コロナ禍の影響で決算手続きの延期が相次いだが、サイバー攻撃を理由とする事態は極めて異例。とはいえ、上場企業にとって決して他人事ではない。

みずほ銀、またもシステム障害の連鎖

みずほ銀行では今夏、システム障害の「悪夢」が再来した。8月20日に店舗窓口で入出金や振込などの取引ができなくなった。実はこうしたトラブルは今年5回目。すると3日後の23日、今度は一部のATM(現金自動預け払い機)が一時利用できなくなり、数えて6回目のトラブル発生となったのだ。

同行は2月から3月にかけて、ATMにキャッシュカードや通帳が吸い込まれて出てこないトラブルなど4回のシステム障害を立て続けに起こし、“メガバンク失格”の声があがったのは記憶に新しい。システム障害の連鎖をどう断ち切るのか、後がない立場に立たされている。

文:M&A Online編集部