賃金の引き上げを見込む企業が7年ぶりの低水準に 

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2021年度にベースアップやボーナスで賃金を引き上げる(定期昇給は含まない)見込みの企業が7年ぶりの低水準となった。

帝国データバンクが、2021年度の賃金動向に関する企業の意識について調査したところ、このような結果が出た。理由のおよそ7割を「新型コロナによる自社の業績低迷」が占めており、コロナ禍で企業が苦境に喘いでいる状況が改めて浮き彫りになった。

最も落ち込みが大きいのは運輸・倉庫業

調査は2021年1月18日から31日の間に、全国2万3695社を対象に実施し、1万1441社から回答(回答率48.3%)を得た。賃金に関する調査は2006年から毎年1月に実施しており、今回が16回目となる。

2021年度に賃金の引き上げを見込む企業の割合は2020年度よりも11.3 ポイント低い42.0%で、2014年度(46.4%)以来7年ぶりの低い水準となった。

2020年度との比較で最も落ち込みの大きかったのが、旅行代理店や旅客自動車運送など観光関連業種を含む「運輸・倉庫業」の18.5ポイント減で、賃金引き上げを見込む企業は36.7%(2020年度は55.2%)にとどまった。

次いで落ち込みの大きかったのは「サービス業」の13.9ポイント減で、賃金引き上げを見込む企業は40.4%(同54.3%)だった。

また賃金引き上げを見込む企業の割合が最も低かったのは「金融業」の25.2%(同36.1%)で、次いで「不動産業」の31.5%(同39.1%)となった。

一方、賃金引き上げを見込む企業の割合が最も高かったのは人手不足が顕著な「建設業」の 47.8%(同57.9%)で、次に「製造業」と「農・林・水産業」が44.7%で続いた。

製造業は2020年度よりも9.5ポイント下がったが、農・林・水産業は唯一2020年度を上回り、1.8ポイント増となった。

賃金引上げが見込めない理由のうち76.7%を「自社の業績低迷」が占め、2020年度から18.6 ポイントの大幅増加となった。また業績低迷に新型コロナウイルスが影響している企業は69.4%に上り、およそ 7 割の企業が賃金を引き上げることができない理由として、新型コロナウイルスによる業績の低迷を挙げていることが分かった。

雇用維持と事業継続を優先

新型コロナウイルス感染症拡大によって業績が悪化する企業は後を絶たず、東京商工リサーチの調査では2021年2月18日時点でコロナ関連の経営破たん企業は1022社に達した。

こうした状況を踏まえ雇用維持と事業継続を最優先にするため、日本経済団体連合会では一律の賃上げを打ち出さない方針を示している。

文:M&A Online編集部