「リサイクル」は2015年9月の国連サミットで採択された持続可能な開発目標(SDGs)の目標12「つくる責任 つかう責任」に当たる重要な取り組みだ。かつては「コスト削減」の一貫と捉えられていたリサイクルも、最近では消費者の意識変化でバージン(まっさらの)素材を使った商品より割高でも売れるヒット商品になりつつある。こうしたトレンドを受けて注目されている三つのリサイクル商品を紹介しよう。
通信販売大手のディノス(東京都中野区)の寝具ブランド「reumo(リウモ)」は、リサイクル羽毛とリサイクルポリエステルの側地を使用したダウンケット。SDGsに対応するため、2021年8月に同社が立ち上げた新たなブランドだ。
顧客が使わなくなった羽毛布団を全国から回収して解体。布団から取り出した羽毛を選別して丁寧に洗浄したのち、国内工場で高温スチームによる加工を施して羽毛を新品同様に再生する。それをリサイクル側生地で包み込み、新しいダウンケットに再生する仕組み。
ダウンケットは薄手の寝具で、夏でも快適な保温性と調湿性を保ち、体を冷やしすぎず蒸れることなく心地よい睡眠を実現するという。3月25日に「くまのプーさん」原作デビュー95周年を記念して、同キャラクター柄のリサイクルダウンケットとして発売した。「リウモ」ブランドでは2番目の商品だ。
ディノスでは1万円未満のダウンケットも販売しているが、同商品の価格はシングルロングが1万500円(消費税込み、以下同)、セミダブルロングが1万5500円、ダブルロングが2万500円と、決して「格安」ではない。それにはリサイクル商品ゆえの理由がある。
「リウモ」では洗浄した水の透明度を測定する「清浄度検査」で、日本羽毛製品協同組合の新毛基準の2倍にあたる1,000mm以上の基準値をクリア。衿元の縫い目をなくすことでボリュームを持たせ、首から肩まで隙間ができないように中の羽毛をつぶさず暖気を逃しにくい立体キルト仕立ての側地にするなど、バージン羽毛以上に手間をかけているのだ。
海の生態系を破壊すると警鐘が鳴らされている海洋プラスチックごみ。陸地で捨てられ、最終的に海へ流れ込んでしまったペットボトルや包装容器などのプラスチックごみは、毎年800万~1200万トンに達し、2050年には魚よりもプラスチックの量が多くなるとの試算もある。
この海洋プラスチックを回収して再生した樹脂をボールペンのボディーにリサイクルしたのが、パイロットコーポレーション<7846>の「スーパーグリップG オーシャンプラスチック」だ。価格は110円と、至って普通のボールペンだが、日本国内で回収した海洋ゴミをリサイクルした再生樹脂で筆記具を製造するのは初めてという。
一般消費者の間でも話題になったが、強い関心を示したのはSDGsに取り組む企業だった。元々、ボールペンは企業ノベルティーとして利用されることが多く、SDGsへの取り組みを外部にアピールするにはうってつけの商品だったのだ。
旺盛な法人需要で、発売から半年で約50万本を販売するベストセラー文具となった。ノベルティー用に社名やロゴマークなどを印刷しやすい白色ボディーを追加したり(一般向けは青色)、紙パッケージを用意したりするなどの工夫を施したのも拡販に奏功した。
「使わなくなった陶器を肥料に再利用」そんな意外なリサイクルを実現したのは、1908年創業の老舗洋食器メーカーであるニッコー(石川県白山市)。同社が生産するボーンチャイナ製食器「NIKKO FINE BONE CHINA」は、陶磁器の原料である石や粘土に加えて、食肉加工で廃棄物となった牛の骨を溶解再合成したリン酸三カルシウムが約50%含まれている。
陶磁器の白さと透光性の実現や、鉛・カドミウムフリーという安全性の観点での配合だった。この成分に着目して石川県立大学との共同開発したのが、リン酸肥料の「BONEARTH(ボナース)」。高温焼成で製造しているので臭いもなく、長期保存できる安全・清潔な肥料という。樹木、草花、野菜などの元肥に利用でき、価格は300g入りが715円、800g入りが1320円。
植物の根から出るクエン酸に触れることでリン酸を溶かして養分として吸い上げるため、肥料を入れすぎても作物の成長に悪影響を与えないという。水に溶けないので肥料効果が長期間持続し、河川流出しにくいため環境にもやさしい。肥料の見た目も美しく、園芸用品の化粧砂としても活用できる。
2月10日に農林水産省から肥料として認定を受け、4月2日に発売した。彩り豊かな食材を料理として盛り付けた食器が、食材を育てる肥料として再利用する。食卓と農地を循環するニッコーのリサイクル事業は、まさにサスティナブル(持続的)な取り組みと言えるだろう。
文:M&A Online編集部