ユニゾHDが「救い主」のソフトバンクに反旗を翻した理由

alt

ユニゾホールディングス(HD)<3258>は2019年9月27日、ソフトバンクグループ<9984>傘下の投資ファンドである米フォートレス・インベストメント・グループが実施中の公開買い付け(TOB)への賛同意見を見直し、意見を留保すると発表した。

救い主の「白馬の騎士」に反旗

ユニゾはエイチ・アイ・エス(H.I.S)<9603>から敵対的TOBを仕掛けられたが、対象となった企業を守るホワイトナイト白馬の騎士)としてフォートレスがTOBに乗り出し、「防衛」に成功している。そのいわば恩人でもあるフォートレスに「ノー」を突きつける異常事態となった。

ユニゾが賛同意見を覆した最大の理由はTOB価格の引き上げ。1株当たり5000円への引き上げをフォートレスに要請したが回答がなかったという。同5000円という価格は、ユニゾが同日開示した第三者による買収提案で提示されたもので、この価格を下回る金額でのTOBは株主利益を損ねるとしている。

もっともらしい理由だが、その第三者による同5000円での買収提案もユニゾは拒否している。「従業員の保護が十分ではない」ことを問題視したという。買収交渉が継続しているのならともかく、提案を拒否したのであれば同5000円での買収自体が消滅したわけだから、ユニゾがフォートレスにTOB価格引き上げを要求するのは「筋違い」に見える。

しかし、現在のユニゾの株価は9月27日の終値が4510円と、フォートレスの提示するTOB価格の4000円を上回っている。フォートレスはTOB期間を10月1日から同7日まで延長したが、このままでは不成立となる可能性が大きい。これが不成立に終われば、H.I.Sは再びTOBを仕掛ける方針を明らかにしている。ユニゾとしては何としてもフォートレスによるTOBを成立させ、H.I.Sによる敵対的買収の可能性を確実に排除したいのだ。

「変なホテル」を展開するH.I.Sは、ユニゾHDを買収してホテル事業の拡大を狙うとしている(変なホテルホームページより)

そのためにはフォートレスにTOB価格を引き上げてもらうしかない。却下した買収提案をわざわざ同時公開したことからみて、ユニゾはTOB価格を引き上げの「プレッシャー」をかけたといえそうだ。ただ、フォートレスを傘下に置くソフトバンクとしては、そう簡単に財布のひもを緩めるわけにはいかない理由がある。

ユニゾに「奥の手」はあるのか?

ソフトバンクが総額で106億5000万ドル(約1兆1400億円)を投じているシェアオフィス「ウィーワーク」を展開する米ウィーカンパニーは新規株式公開IPO)を目前に、企業価値が2019年1月時点の470億ドル(約5兆円)から直近では100億ドル(約1兆円)台にまで暴落。たまらずソフトバンクは、創業者でカリスマ経営者だったアダム・ニューマン最高経営責任者(CEO)を事実上「解任」した

同9月12日には子会社のヤフー(10月に「Zホールディングス」に社名変更)を通じて、アパレル通販サイトを運営するZOZOをTOBで買収すると発表している。取得金額は最大で4007億円にのぼる。そのヤフーも同5月に携帯電話子会社のソフトバンクを通じて4565億円で子会社化した。

さらには米ベインキャピタルが保有する日帰り温泉施設・旅館運営の大江戸温泉物語グループ売却にソフトバンクも応札したが、買収には1000億円を超える資金が必要とみられている。こうした「台所事情」もあって、ユニゾのTOB価格を引き上げるのは厳しい状況なのだ。

大江戸温泉物語グループ売却に応札するなど、ソフトバンクは買収ラッシュの真っ只中にある(大江戸温泉物語ホームページより)

ソフトバンクとしては、ユニゾのTOBが不成立に終わったとしても失うものなど何もない。TOB不成立で株価が下落し、H.I.Sが再TOBに成功したとしても「知ったことではない」のである。困るのはユニゾだけだ。

しかも、ユニゾの株価には割高感がある。ユニゾ株の適正価格は3000円前後とみられており、TOBが成立すれば株価もこの水準にまで下がるだろう。ユニゾあるいは関係企業が成立後にそれ以上の価格で株を買い戻す約束でもなければ、ソフトバンクもTOB価格の引き上げには二の足を踏むはずだ。

ソフトバンクによるTOBを実現するためにユニゾがどう動くのか。それともフォートレスによるソフトバンク主導のTOBに代わる「奥の手」があるのか。10月8日のTOB応募終了に向けて、「ユニゾ争奪戦」に参加する企業の動きに注目だ。

文:M&A Online編集部