「資金難」に苦しむテスラが中国進出!米メディアはどう報じたか

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米電気自動車(EV)メーカーのテスラが中国へ進出するニュースは、米ハーレー・ダビッドソンの国外生産移転に続き、アメリカに衝撃を与えた。明らかになった進出計画はテスラが上海市郊外にEVの開発・生産拠点を設け、電池・主要部品製造から車両組み立てまでの一貫生産に乗り出すというもの。最終的な生産目標は年間50万台。同社としては初の海外工場であり、「トランプ関税」で火ぶたを切った貿易戦争の回避を狙う。米メディアの論調を整理した。

テスラのイーロン・マスクCEO
トランプ政権の意に反して中国への生産移転を決断したテスラのマスクCEO(同社ホームページより)

トランプ大統領が「目をそむけたい」テスラ中国工場

ニューヨーク・タイムズ紙(7月10日)は、「テスラの中国工場はトランプ政権が最も見たくない眺めだろう」と皮肉った。テスラにとっては米中貿易戦争の影響を避け、中国の巨大サプライチェーン(部品供給網)に近づくチャンスだと指摘。同社の決断は、部品輸入にかかる25%の関税を「鉛の靴を履いてオリンピック競技をするようなもの」(テスラのイーロン・マスクCEO)とするたとえによく表れているとした。

同記事は「テスラ車」ならではの強みで、中国市場に乗り込めるとコメントした。中国のEVメーカーの大半は小型で手軽な車を生産する傾向にあるのに対し、テスラ車は富裕層が多く住む北京や上海などで好まれる洗練されたデザインが特徴。中国はEVでも世界最大の市場であり、「テスラにとっては潜在的な巨大マーケットへの強い足場づくりの機会になる」と評した。

開放された巨大EV市場に飛びつくドイツ車メーカー

ニューヨーク・タイムズ紙(7月11日)は、中国に流れこむドイツ自動車メーカーの動きに着目した。中国政府は大気浄化と排気ガス削減の努力の一環として、EVの生産と販売を補助金により推進してきた。同時に「世界の製造業大国」を目指す中国政府主導の「メイド・イン・チャイナ2025」計画の根幹をなす新エネルギー車(NEV)市場を、外国企業に開放すると公約している。

VW e-Golf
ドイツ車メーカーもEVでの中国進出を狙う(VWホームページより)

同記事は独メーカー(フォルクスワーゲン=VW、BMW、コンチネンタル、ダイムラー)が市場開放を受けて、立て続けに具体的な計画を示していることに触れ、「そろって世界最大のマーケットである中国を狙っている」と説明した。

特にBMWとダイムラーは、米国から中国への生産切り替えを狙う。上海でのテスラの製造発表もこの流れに沿うものであり、ドナルド・トランプ米大統領を不愉快にするだろうと同記事は指摘。トランプ大統領が貿易戦争をしかけるのは、北京の手から技術を守るためでもあるからと類推したうえで、「しかし、今やハイテク自動車産業はトランプ大統領の手元を離れ、中国めがけて動いているようだ」とコメントした。

工場建設費用について沈黙するテスラ 

ブルームバーグ(7月10日)は、テスラと上海市との覚書で、投資規模に関する詳細な内容がないことに着目した。同記事はテスラの第1四半期末のキャッシュがわずか27億ドル(約3050億円)にもかかわらず、新型のテスラ「モデル3 」への投資は数十億ドル、中国工場での「モデル3」生産費用は30-50億ドル(約3390億-5650億円)と試算。テスラの資金力は不足しており、中国での工場建設には資金調達が不可欠だろうとコメントした。「ようこそテスラ、天国へ。今は”しぶしぶ”支払う時だ」。ブルームバーグ(7月11日)はこの見出しで、活気があるEVメーカーに比べてテスラが資金面で弱い立場にさらされていることに触れた。

テスラ「モデル3」
「モデル3」の中国生産には30億ドル以上の資金が必要(同社ホームページより)

テスラは他にも3つの合意書にも署名している。開発・イノベーションセンターも設立する予定であり、中国への技術移転が起きうると指摘した。上海当局者が「テクノロジーの共有は交渉次第」と発言したとされるとも伝えている。同記事は独自技術の威力を誇ってきたテスラに対し、中国政府が政策と補助金で支援しているにもかかわらず「中国自身のチャンピオン」をいまだ作り出せないでいることから、「テスラは簡便な解決策になりうる」とコメントした。

<参照記事>
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https://www.nytimes.com/2018/0...
https://www.bloomberg.com/news...
https://www.bloomberg.com/view...

文:Yuu Yamanaka/編集:M&A Online編集部