「M&Aの手法」を理解するための3つの観点とは

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M&Aとは何か?

M&Aとは、「Mergers and Aquisitions」の略語です。直訳すると「合併と買収」という意味になりますが、一般的には企業の合併や買収だけでなく、事業の売買や資本参加などさまざまな企業提携を「M&A」と呼んでいます。

M&Aは、自社で不足している経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報)を補い、事業の拡大や再構築を行うために、経営権や事業資産を譲渡する経営戦略のひとつといえるでしょう。

新聞などでセンセーショナルに報道される「敵対的買収」は、実際のところほとんど行われません。日本国内で公表されている件数だけでも毎年2000件から3000件のM&Aが実施されています。

さらに公表件数に含まれない中小企業のM&Aもよく行われており、一説によるとM&Aの成約件数の約7割は非上場企業によるものであるともいわれています。

特に中小企業のM&Aは年々増えており、その背景にあるのが「後継者不在」による第三者への事業承継によるものです。後継者が見つからないため廃業するといのは非常にもったいないですよね。そのため国をあげて「事業承継」を支援しています。

新しい動きとしては、20代、30代の若手経営者が出口戦略(エグジット)として、M&Aを選択するというケースも出てきています。

M&Aにはどのような手法があるのか?

M&A手法を分類する3つの観点とは?

M&Aの手法(スキームと呼ぶこともあります)は合併や株式譲渡などいくつかありますが、理解が進むよう「売買対象」「組織の存続」「支払対価」の3つの観点で大まかに捉えてみるとよいでしょう。

1.売買対象
「売買対象」とは、会社の全部を売買するのか、一部を売買するのかということです。会社を丸ごと買収しない場合でもM&Aといいます。例えば、事業を売買する「事業譲渡」や、事業を法人格として切り出して売買する「会社分割」もM&Aです。

2.組織の存続
2つ目の観点は「組織の存続」です。買収された組織が存続するのか、吸収されるのかという点に着目します。買われる会社の株式を全部または一部を取得する際、既存の株式を取得する「株式譲渡」や「株式交換」、新しく発行した株を取得する「第三者割当増資」や「株式移転」などがあります。

「合併」では、一方の会社がもう一方の会社(存続会社)に吸収される「吸収合併」と、新しく設立した会社に合併する両方の会社が吸収される「新設合併」があります。「事業譲渡」や「会社分割」も、事業が既存または新設の会社に引き継がれる、つまり組織は吸収されると分類できます。

3.支払対価
3つ目の観点は「支払対価」です。対価とはある行為(ここではM&A)に対して得る報酬などのことをいいます。株式か金銭かという点から見ていきましょう。

「株式交換」は文字通り、買う会社の株式の対価として自社株式を渡します。「合併」や「会社分割」の対価も原則として組織を引き継ぐ会社の株式です。現金を持っていなくてもM&Aができるということになります。一方、「株式譲渡」や「第三者割当増資」、「事業譲渡」の対価は現金です。

最後に、今回出てきたM&Aの手法について、3つの観点から次のようにまとめておきます。

手法 売買対象 組織の存続 支払対価
合併 全部 吸収※1 株式※2
株式交換 全部または一部 存続 株式※2
株式移転 全部 存続 株式
株式譲渡 全部または一部 存続 現金
事業譲渡 一部 吸収 現金
会社分割 一部 吸収 株式※2
第三者割当増資 一部 存続 現金

※1:存続会社(吸収する方の会社)は存続する。
※2 :金銭やその他財産も認められている。

文:M&A Online編集部