23年度与党税制改正大綱が決定、スタートアップを強力支援

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スタートアップに再投資の譲渡益課税を20億円まで免除

自民、公明両党は12月16日、2023(令和5)年度の与党税制改正大綱を決定した。岸田文雄首相が掲げる「新しい資本主義」の重点投資分野のひとつであるスタートアップ・エコシステムの抜本的強化に向け、保有する株式を売却してスタートアップに再投資するエンジェル投資家らへの優遇税制を創設する。

スタートアップへの資金供給を支援する優遇税制では、自己の株式譲渡益を元手に起業した創業者やプレシード、シード期のスタートアップに再投資したエンジェル投資家に、再投資分の株式譲渡益に課税しない制度を創設。非課税措置の上限額は、米国QSBS税制に係る株式譲渡益の非課税措置の規模(約13億5,000万円)を大きく上回る20億円とする。

エンジェル税制の要件も緩和へ

プレシード、シード期のスタートアップへの投資をさらに呼び込むため、ベンチャー企業への投資時点と株式売却時点で優遇措置を受けられるエンジェル税制の要件緩和も行う。創業後の事業展開を後押しする観点では、一定のスタートアップに対するストックオプション税制の権利行使期間を10年から15年に延長するといった措置を講じる。

スタートアップM&Aは発行済み株式取得も減税

また、IPO(新規上場)に偏重しているスタートアップのイグジットをM&Aに誘導するため、スタートアップへの出資を優遇するオープンイノベーション促進税制を拡充。現行制度で除外されている発行済み株式の取得も対象とし、既存企業の資金や人材などを活用しやすくする。これにより、スタートアップM&Aは実質的に全てが減税対象となる。

さらに、M&Aから5年の間に成長率や投資規模の要件を満たした場合は、その後も減税メリットを継続させる仕組みを整える。岸田政権が11月に取りまとめたスタートアップ育成5か年計画では、スタートアップへの投資額について5年間で10倍増を目指していることから、出資者へのインセンティブを拡充してスタートアップの成長を強力に促す。

中小企業税制の特例措置を創設・延長

このほか、原材料価格の高騰などで収益環境が悪化している状況を考慮し、中小企業などの法人税率軽減の特例や中小企業投資促進税制、中小企業経営強化税制の特別償却・税額控除の適用期限を2024年度まで2年間延長。償却資産に係る固定資産税も、生産性向上や賃上げ促進を目的とした2年間の時限的な特例措置を創設する。

NISAの恒久化と抜本的拡充も

「新しい資本主義」のコンセプトである「成長と分配の好循環」の実現に向けては、個人投資家の優遇制度であるNISAを恒久化。非課税保有期間も無期限とする。また、新たに「成長投資枠」を設け、年間投資水準を現行の120万円から360万円に拡大。生涯にわたる非課税限度額も800万円から1,800万円に広げ、「貯蓄から投資へ」の流れを加速させる。

政府は12月中に2023年度の税制改正案を閣議決定し、年明けの通常国会に関連法案を提出。2022年度末までの成立を目指す。

文:M&A Online編集部

関連リンク:令和5年度与党税制改正大綱(自由民主党)