承認間近の「モデルナ」製の新型コロナワクチン その効果は?

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日本政府が2021年前半に5000万回分を調達する予定の米バイオ企業・モデルナ(マサチューセッツ州 )製の新型コロナウイルス用ワクチンが2021年5月にも承認される見通しとなった。

日本の提携企業である武田薬品工業<4502>が、2021年3月に米国での臨床試験データを基に製造販売申請を行い、同年5月10日に20歳以上の日本人男女200人を対象に実施した第1/2相臨床試験のデータを国に提出したことから、承認の可能性が高まってきた。

モデルナのワクチンとはどのようなものなのか。そしてその効果は?

全員で中和抗体が増加

モデルナのワクチンは、たんぱく質を生成するための情報を運ぶ遺伝子であるメッセンジャーRNA(mRNA)を用いる。mRNAはDNAに保存されている遺伝情報を転送して、必要なたんぱく質を細胞に作り出させる遺伝子で、体内のすべての細胞に存在する。

今回のワクチンは新型コロナウイルスが細胞内に入り込む際に必要なウイルス表面にある突起状のたんぱく質(スパイクたんぱく質)を作り出すように設計されている。

mRNAが体内で新型コロナウイルスのスパイクたんぱく質を作り出すことで、免疫力を獲得し、新型コロナウイルスの感染を予防できる。新型コロナウイルスそのものではなく、表面のたんぱく質だけを作り出すため、感染のリスクはない。現在、接種が行われている米国の製薬会社ファイザー製のワクチンもモデルナと同じmRNAだ。

このワクチンを用いて武田薬品が行った臨床試験では、2回の接種を行った全員に、2回目の接種から28日後にウイルスの活性を抑える中和抗体が増えていた。さらに重大な安全性の懸念は報告されず、忍容性(副作用が被験者にとってどれだけ耐え得るかの程度)も「概ね良好」だったという。

3月に行った製造販売承認申請では、米国で行っている第3相臨床試験の安全性と有効性のデータを用いており、今回のデータはこの製造販売承認申請に追加される。

武田薬品はモデルナのほかにも新型コロナウイルスワクチンの開発に取り組んでいる米国のバイオテクノロジー企業ノババックス(メリーランド州)とも提携しており、日本国内向けに整備した新型インフルエンザ用のワクチン生産設備を活用して、これらワクチンを製造する予定。

さらにジョンソン&ジョンソンのグループが開発している1回投与型の新型コロナウイルスワクチンの製造のために、同社の生産設備を用いることも公表している。

文:M&A Online編集部