抗がん剤の供給停止に陥った「大鵬薬品」ってどんな会社

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東京都千代田区の本社ビル

大鵬薬品工業(東京都千代田区)は、乳がんや胃がん、肺がん、膵がんなどの治療薬「アブラキサン」の供給を、2021年10月中旬以降一時的に停止する可能性があると発表した。

製造元の米ABRAXIS BIOSCIENCEの拠点で定期検査の結果が基準に達せず、日本向け輸出が中断しているためで、供給再開の見通しは立っていないという。

国内の「アブラキサン」の使用者は年間4万人と言われており、これら患者の治療への影響が懸念される。

同社では「製薬会社としての重要な使命である医薬品の安定供給が確保できず、多大なご迷惑をおかけしますこと、重ねまして深くお詫び申し上げます」としている。大鵬薬品とはどのような会社なのか。

アブラキサン、2005年にライセンス契約

大鵬薬品は、医薬品、医療機器、食料品、化粧品などの製造販売を手がける大塚ホールディングス<4578>の子会社で、1963年の創業初期から抗がん剤などの医療用医薬品と、疲労の回復や予防に効果のある「チオビタ・ドリンク」などの薬局で購入できるコンシューマー商品を手がけてきた。

現在は大塚グループ内でがん領域の事業を担っており、難治性がん治療薬の創製に挑戦しているほか、がん研究で培った技術を応用して免疫・アレルギー領域の創薬研究にも取り組んでいる。

これら医療用医薬品分野の売り上げは全体の90%占めており、抗悪性腫瘍剤(代謝拮抗剤)「ティーエスワン配合カプセル」や抗悪性腫瘍剤「ゾリンザカプセル」、非ステロイド性消炎、鎮痛剤「ミリダシン錠」などの製品を販売している。「アブラキサン」については2005年にライセンス契約を結び、日本国内に供給してきた。

コンシューマー商品分野では、「チオビタ・ドリンク」をはじめ、二日酔いや胃のむかつき、消化不良、食欲不振などに効果のある「ソルマックプラス」、せきやたんの症状を緩和できる「ピタスせきトローチ」などの製品を持つ。

2020年12月期の売上高は1401億1000万円(前年度比0.8%増)、当期利益は152億4000万円(同24.4%増)で、2期連続の増収増益となった。「アブラキサン」の供給停止は業績にどのような影響を与えるだろうか。

【大鵬薬品の業績推移】単位:億円

2016年12月期 2017年12月期 2018年12月期 2019年12月期 2020年12月期
売上高 1504.46 1304.46 1249.67 1389.82 1401.1
当期利益 280.65 103.76 95.7 122.54 152.4


大鵬薬品の沿革
1963 大塚製薬が大鵬薬品工業を設立
1974 経口投与が可能な抗がん剤「フトラフール」が誕生
1975 「チオビタ・ドリンク」のテレビ広告を開始
1976 ニチバンと業務提携し、資本参加
1978 抗体化成工業と業務提携し、資本参加
1990 心泉医薬の株式を取得、経営に参加
1999 新規化合物を「フトラフール」に配合した「ティーエスワン」を発売
2005 抗がん剤「アブラキサン」のライセンス契約を締結
2009 大塚ホールディングスの完全子会社に
2009 万有製薬のつくば研究所を買収
2013 アステラス製薬と醗酵創薬研究に関する資産の譲渡契約を締結

文:M&A Online編集部