回転ずし店「スシロー」を展開するFOOD & LIFE COMPANIES<3563>が、競合他社よりもコストをかけて品質の高い食材を調達する方針を打ち出した。
すしネタの仕入れなどに支払った金額の、売上高に占める割合を示す原価率を、2021年9月期の45.92%から、2024年9月期までに50%にまで高めるという。
仕入れ価格を引き上げることで、利益は圧迫されるが、おいしいすしを追求するため、業績悪化につながりかねない思い切った施策に踏み切る。
これによって競合他社との差別化は図れるのだろうか。回転ずし上場4社の原価率を見てみると。
「スシロー」のFOOD & LIFE COMPANIES、「くら寿司」を展開するくら寿司<2695> 、「かっぱ寿司」を展開するカッパ・クリエイト<7421>、「すし銚子丸」を展開する銚子丸<3075>の上場4社の過去3年間の平均原価率は、かっぱ寿司の48.5%、スシローの47.16%、くら寿司の45.23%、すし銚子丸の40.77%の順だった。
スシローは2019年9月期に48.12%だったのが、2020年9月期には47.45%に、2021年9月期には45.92%に低下しており、その分、粗利益率は高まっていた。
これを今回は一気に50%にまで引き上げるわけで、他社の原価率が大きく変化しなければ、かっぱ寿司を抜いて、仕入れに最もお金をかける回転ずしチェーンとなる。
くら寿司は、2018年10月期が45.59%、2019年10月期が45.27%、2020年10月期が44.84%で、45%前後で安定している。直近の2021年10月期第3四半期も45.36%で大きな変化はない。
かっぱ寿司は、2019年3月期が49.09%、2020年3月期が47.87%、2021年3月期が48.54%で、年によってばらつきが見られる。直近の2022年3月期第2四半期は51.49%まで高まっており、3年間の平均を3ポイント近く上回った。どのあたりに着地するのか。2022年3月期はスシローが目標とする50%を上回る可能性もありそうだ。
すし銚子丸は、2019年5月期が40.85%、2020年5月期が40.91%、2021年5月期が40.56%で、最も安定している。直近の2022年5月期第1四半期は41.11%と若干上昇したものの、3年平均と大きな乖離はない。
【FOOD & LIFE COMPANIESの原価率の推移】
2019年9月期 | 2020年9月期 | 2021年9月期 | 平均 | |
原価率(%) | 48.12 | 47.45 | 45.92 | 47.16 |
【くら寿司の原価率の推移】
2018年10月期 | 2019年10月期 | 2020年10月期 | 平均 | |
原価率(%) | 45.59 | 45.27 | 44.84 | 45.23 |
【カッパ・クリエイトの原価率の推移】
2019年3月期 | 2020年3月期 | 2021年3月期 | 平均 | |
原価率(%) | 49.09 | 47.87 | 48.54 | 48.5 |
【銚子丸の原価率の推移】
2019年5月期 | 2020年5月期 | 2021年5月期 | 平均 | |
原価率(%) | 40.85 | 40.91 | 40.56 | 40.77 |
今後の原価率については、4社の業績を見るとある程度推測できる。FOOD & LIFE COMPANIESの2022年9月期の営業利益は210億円で、利益を圧迫する原価率の引き上げに耐え得る余地がある。
これに対し、くら寿司の2021年10月期は25億円ほどの営業赤字の見込みで、カッパ・クリエイトの2022年3月期も10億円ほどの営業赤字が避けられない。このため原価率は上げることよりも、下げることに関心が向かいそうだ。
銚子丸の2022年5月期の営業利益は5億円ほどで、原価率を引き上げることは可能だが、仮に2021年5月期の原価率を50%として計算すると、10億円ほどの営業赤字(実際は6億円ほどの黒字)になる。このため原価率を大きく引き上げることは難しい。
現段階で原価率を50%にまで引き上げることができるのはFOOD & LIFE COMPANIESだけで、同社が仕入れに最もお金をかける回転ずしチェーンになれる可能性は高いと言えそうだ。
文:M&A Online編集部