値上げの「スシロー」が苦戦 一部値下げの「くら寿司」と、価格据え置きの「元気寿司」は増収に

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東京・秋葉原のスシローの店舗

スシロー、くら寿司、元気寿司の回転ずし大手3社の2022年10月の業績に、値上げの影響が現れた。

2022年10月1日に、一皿110円の商品を120円にアップ(店舗によって121円が130円に、132円が150円にアップ)したスシローは、既存店の売上高、来店客数が20%前後の落ち込みになったのに対し、同日に一皿110円の商品を115円に引き上げた一方、220円の商品を165円に引き下げた、くら寿司は、来店客数が前年同月の実績をわずかに割り込んだものの、売上高は6.1%の増収となった。

さらに、価格を据え置いた元気寿司は、来店客数、売上高ともに前年同月の実績を5~8%上回った。

これら業績の違いがすべて値上げの影響とは言いないが、価格に敏感になった消費者の行動が少なからず現れたといってよさそうだ。

スシローを運営するFOOD & LIFE COMPANIES<3563>の2022年9月期は、相次いだ不祥事で客足が遠のき店舗の収益が悪化したため、68億円の減損損失を計上したことから、前年度比55.8%もの営業減益を余儀なくされた。

2023年9月期は13.8%の増収と8.7%の営業増益を見込むが、新年度のスタート月である10月に20%近い減収となり出鼻をくじかれた格好だ。値上げと、不祥事の影響を跳ね返しどこまで盛り返せるだろうか。

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不祥事を上回る影響

スシローの10月の既存店の売上高は前年同月比81.5%、来店客数は同79.9%と大幅な減少となった。

同社は2022年6月に、消費者庁から、おとり広告で措置命令を受けたほか、7月にもビール半額キャンペーンが始まる前に告知する不祥事が続いたことから、2022年9月期の既存店の売上高は前年度比96.6%、来店客数は同97.5%と振るわなかった。

値上げの影響は、この不祥事の影響を大きく上回る形となった。客単価は、2022年9月期に99.1%だったのが、10月は102.0%となり、こちらはプラスに働いた。

2022年9月期の売上高は2813億100万円(前年同比16.8%増)、営業利益は101億2300万円(同55.8%減)という厳しい内容。2023年9月期は売上高3200億円(同13.8%増)、営業利益110億円(同8.7%増)と増収増益の見込だが、営業利益は2021年9月期の229億100万円の半分以下に留まる予想で、回復には時間がかかりそうだ。

元気寿司も値上に

くら寿司の10月の既存店の売上高は同106.1%で、客単価も同106.4%と伸びたものの、来店客数は同99.7%で、マイナスとなった。前月の9月の来店客数が同112.9%、2021年11月から2022年10月までの通期の来店客数が同105.3%だったことを考えると、値上げの影響は少なくなかったといえそうだ。

価格を維持した元気寿司は10月の既存店の売上高が前年同月比108.2%、来店客数が同105.3%、客単価が同102.8%と、いずれもプラスになった。同社の2022年4~9月の平均だと、売上高は前年同期比110.8%、来店客数は同112.7%、客単価は同98.3%だった。来店客数は10月の方が下回ったものの、客単価は逆に10月の方が上がっており、10月はほぼ通常月と変わらなかったと言える。

その元気寿司も2022年11月30日から、一部の商品(10品程度)を一皿110円から120円に値上げする。12月の月次の業績がどのように変化するのか。コストアップにつながる円安の行方とも相まって、結果を予想するのは難しそうだ。

【2022年10月の既存店の業績(前年同月比、%)】

スシロー くら寿司 元気寿司
売上高 81.5 106.1 108.2
来店客数 79.9 99.7 105.3
客単価 102 106.4 102.8

文:M&A Online編集部