「後継者ネットワーク構築事業」実施機関にベンチャー型事業承継

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承継機運を高め、企業の成長を促進

中小企業庁は9月21日、2022年度「中小企業再生支援・事業承継総合支援事業(後継者ネットワーク構築事業)の実施機関を、一般社団法人ベンチャー型事業承継(東京都千代田区)に決定した。地域の経済や雇用も守る事業承継の機運を高め、承継後の企業の成長を促す仕組みづくりを担う。

実施機関は8月24日から9月14日まで公募し、外部有識者による審査委員会で選考。応募は1件のみだった。ベンチャー型事業承継は2018年、ベンチャー企業の経営者らが中心となって設立。若手後継者の新規事業開発を活発化させる「アトツギベンチャーサミット」などのイベントを全国各地で開催している。

後継者の新規事業開発を後押し

中小企業庁は2017年度、商工会議所や商工会、金融機関など身近な支援機関で構成される都道府県単位の「事業承継ネットワーク」を構築する事業を開始。経営者にプッシュ型の事業承継診断を実施してきた。

一方、後継者は新規事業開発などに対する評価や、自らの課題の解決に向けた相談相手の不足といった問題を抱えている。後継者はデジタル化、グリーン化などの社会的要請に応えた事業再構築を担う役割も期待されることから、中小企業庁は現経営者が現役であるうちに、後継者が新たなビジネスに挑戦する意識を高めやすい環境を整えるべきと判断した。

後継者ネットワーク構築事業では後継者の掘り起こしに努めるほか、後継者同士や先輩経営者(ロールモデル)とのネットワークを創出。後継者の顕在化を促して課題解決の一助となることで、自社のイノベーションを円滑に進めてもらうための基盤を強固にする。

大規模ピッチイベントと後継者コミュニティーも計画

具体的には、後継者が新規事業開発のアイデアをプレゼンテーションする大規模ピッチイベントをリアルとオンラインのハイブリッド形式で開催。地方予選大会と全国大会(ファイナル大会)を企画し、優秀者には先輩経営者や有識者がフィードバックなどの支援を行う。

また、SNSやホームページなど後継者だけで自走できるコミュニティーを開設し、業種や地域、企業規模ごとのコミュニティーも形成。信用金庫や信用保証協会、自治体などの支援機関もアクセスできるようにすることで、後継者を支援する体制を充実させる。

中小企業の後継者不在率が上昇

東京商工リサーチによると、中小企業の2021年の後継者不在率は58.62%で、前年度比1.09ポイント上昇。後継者がいる企業も「同族承継」が70%近くに及び、親族以外の承継が浸透していない状況が後継者不在率を押し上げる一因となっている。

新型コロナウイルスの影響でビジネスモデルなどの改革が求められている事業者は多いが、トップが高齢で後継者がいない場合は迅速かつ大胆な決断をしにくいとされる。70歳以上の中小企業経営者が約245万人に達すると言われる2025年も迫る中、事業継続について厳しい判断を余儀なくされるケースが増える可能性が指摘されている。

文:M&A Online編集部

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