今さら聞けない「サブスクモデル」とは?

alt

サブスク、SaaS、CRM…。ここ数年でこれらのワードをよく聞くようになった。しかし、どうも横文字が多く、なかなか覚える気が起こらないといった人も多いのではないだろうか。そんな流行語のなかでも「サブスク」を取り上げる。サブスクモデルとは何か?  なぜ世間の企業はこぞってサブスクモデルに移行しようとしているのか?  について基礎的な観点から説明したい。

「カスタマーサクセス」が決定的な要素

サブスクリプション(Subscription)という言葉を直訳すると「定期購読」。サブスクモデルと言われるのも仕組み自体は単純で、サービスを提供し、そのサービスを一括で売上金として受け取るのではなく、月額制や年額制で受け取る仕組みであればそれはサブスクモデルということになる。つまり、アップルミュージックやSpotify、一部のKindle本が読み放題になるKindle Unlimitedもサブスクモデルであり、月謝制のスイミングスクールもサブスクモデルだということだ。

では、サブスクモデルは普通のビジネスモデルとは何が違うのか。この違いを理解するための重要なキーワードとして、「カスタマーサクセス」というものがある。

サブスクモデルの象徴とも言えるSaaS(Software as a Service)の例で考えてみよう。従来ソフトウエアというものは、数万円~数百万円といった価格で販売し、販売したら売ったきりであった。

販売者からすれば、売った製品に故障などが起これば、もちろん修理・交換といった追加のサービスが必要になるが、基本的には売った時点で売上金が入ることが確定するので、顧客に対してそこまで手厚くサポートをする必要は基本的にはない。顧客側からしても、すでにお金は払ってしまっているので、多少使い勝手に不満があるがゆえに他の製品に移りたくても、そう簡単にはできない。

これがサブスクモデルになるとどうだろう。

販売者はソフトウェアを売ったとしても、そこで一気に収益が生じるわけではない。毎月、もしくは毎年売上金を受け取っていくことになる。そのため、ソフトウエアエンジニアの人件費、本社賃料など、開発に要した費用は顧客に長く使ってもらうことではじめて回収することができる。

顧客の継続的な満足を追求

しかし、顧客からすれば、購入時に大金をつぎ込んでいるわけではないので、もしソフトウエアに何か不満があって別にいいサービスが展開されていれば、その別のサービスに移行することも難しくない。つまり、不満に思うことがあればすぐにサービスの利用をやめることが非常に簡単だということだ。

そのため、販売者としては、サブスク期間中に顧客離れが起きないよう、長く顧客に「満足して」サービスを使ってもらうことが決定的に重要になる。こうした顧客の継続的な満足を追求することこそが「カスタマーサクセス」というものであり、従来の「カスタマーサポート」とは一線を画す。 

「所有から利用へ」モノを介さないサービスが興隆

では、なぜ企業はこぞってサブスクモデルに移行しようとしているのだろうか。

その最大の要因が、インターネットとテクノロジーの隆盛だ。2007年にiPhoneが発売され、スマホの隆盛が始まり、ほとんどの人がスマホを持つようになった。また、クラウドが一般的になり、4Gの誕生により通信速度も飛躍的に速くなったことで、企業は「モノを介さないサービス」を提供できるようになった。

例えば、少し前はCDやそれを再生するコンポがないと音楽を聴けなかったのが、今はスマホとイヤホンがあるだけで気軽に聞くことができる。このような外部環境の変化が、様々なビジネスをサブスクリプション型に移行させることを可能としたのだ。

また、サブスクモデルでは、月額ないし年額の課金制にすることで、顧客が満足し続ける限り永続的にサービスを利用し続けてくれるというメリットがある。さらに、特に変化の激しいテクノロジー分野ではサービスのアップデートやリリースの周期が短期化しているため、例えば、1年半ごとにニューモデルをリリースしていたのでは顧客に常に最新のサービスを提供できないといったデメリットが生じる。

いつでも最新モデルをリリースできる

これがサブスクモデルだと、企業は顧客に製品を買い直してもらう必要がないため、いつでもアップデートをしたりニューモデルをリリースすることが可能となる。アドビ(Adobe)がサブスクビジネスに移行したのも、このような事情が背景にあるとされる。 

「所有から利用へ」が喧伝される中、サブスクリプションへと向かう大きな潮流がある。日本でも先月上場したSansan(名刺管理サービス)や、マネーフォワード(家計アプリ)、ユーザベース(企業情報サービス)などに代用されるように、多方面のサービスにおいてサブスクモデルを導入する企業が増えつつある。このような流れが続けば、私たちの生活のほとんどがサブスクリプションによって成り立つ日もそう遠くないのかもしれない。

文:M&A Online編集部