[太陽光関連事業のM&A]売買事業者の買収ニーズが活発に

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業界別M&A動向レポート[太陽光関連事業]

法令改正や競争の激化、工事単価の減少などを背景に倒産が増加

太陽光関連事業は、売電事業者(余剰電力の売却事業)、施工事業者(太陽光発電設備施工業)、O&M事業者(管理メンテナンス事業)の3事業に大別できる。業界動向としては、2012年以降倒産する事業者が増加しており、17年は過去最高の倒産件数を記録したが、その理由は事業内容によって異なる。

まず売電事業者の場合、15年3月31日に廃止された特別一括償却制度の影響が大きい。この制度は、設備取得額の全額を即時償却することにより税金を繰延することができるものだが、あくまでも税金負担を将来に繰り延べることができるだけで、支払うべき税金の額が減るわけではない。この繰り延べてきた税金負担が最近になって顕在化し、耐え切れずに倒産する業者が増えたと考えられる。

また、法令改正によりメンテナンス計画の提出も含まれた事業計画を提出する必要が生じたことが、今までメンテナンスを積極的に行ってこなかった小規模事業者にとって負担となっている。さらに、認可だけを取得して設備を取得しなかった売電事業者は、設備工事を行い、実際に発電を開始しなければ認可を取り消されてしまうこととなった。

このため、太陽光発電設備の設置費用を捻出することが難しい売電事業者は太陽光発電事業を他社に譲渡する場合もある。太陽光発電関連事業は法令改正(規制)による影響が強く、既存の事業者にとっては厳しい状況が続く見込みだ。

太陽光発電事業を他社に譲渡する場合もある。太陽光発電関連事業は法令改正(規制)による影響が強く、既存の事業者にとっては厳しい状況が続く見込みだ。

(図)太陽光関連事業者の倒産 年次推移

一方、施工事業者とO&M事業者の場合には、競争の激化と工事単価の減少が倒産の要因と考えられる。太陽光関連事業は、まず多くの事業者が売電事業に参入し、それを取り囲む形で周辺事業である施工事業者、O&M事業者が大量参入した。固定買取価格制度によって安定した収益を得られる売電事業者とは反対に、施工事業者、O&M事業者は一気に競争が激化、加えて工事単価は年々減少しており、当初の予定通りの収益が得られなくなった事業者が倒産に追い込まれているようである。

売電事業者は買収ニーズが活発化、施行事業者では将来のリスクを見越したM&Aも増加

M&A動向もまた、売電事業者か、施工事業者やO&M事業者のような周辺事業者かにより異なる。売電事業者に関しては買収ニーズが活発化している。

固定価格買取制度初期の高い価格で売電する権利を持つ事業者は、今から売電事業を開始するよりもはるかに高い額で余剰電力を売ることができ、さらに安定して高い収益を得ることができるため、買収ニーズが非常に強い。また、売電事業者の中には認可だけを取得し、未着工の太陽光発電所を保有しているケースもある。そういった事業者も法改正により実際に発電を行うことが求められるようになったため、売電事業の売却を行うケースが見られる。

直近の事例では、2017年9月にジオネクスト<3777>がサンライフコーポレーションへ売電事業を譲渡。同年8月には、ジー・スリーホールディングス<3647>が未着工太陽光発電所の権利を保有する合同会社出資持分の一部を売却している。

また、売電事業に関してはインフラファンドも発電所の取得に乗り出している。インフラファンドは太陽光発電施設などのインフラ施設を投資対象としており、15年4月に東京証券取引所にインフラファンド市場が創設され、17年9月時点ではタカラレーベン・インフラ投資法人<9281>、いちごグリーンインフラ投資法人<9282>、日本再生可能エネルギーインフラ投資法人<9283>が上場している。タカラレーベンは上場から約1年で18件、いちごグリーンは16年10月から17年6月までに15件、そして日本再生可能エネルギーは上場時点で8件の太陽光発電所をそれぞれ取得している。このように、インフラファンドも売電事業のエグジット先として数を増やしてきている。

(図)インフラファンドスキームの例(投資法人の場合)

インフラファンドのスキーム例
出典元:東証インフラファンド市場とは

施工事業者に関しては、自社で施工まで行うことができる事業者に注文が集中する一方で、工事そのものは自社で行わず外注する事業者が工事を受注できず業績が悪化、M&Aによる譲渡を検討する事業者も増えている。

ただし、今は受注を独占し収益を上げているような事業者であっても、先行きは必ずしも明るくない。現在は固定価格買取制度による売電事業が活況なため、太陽光発電設備の工事の受注量は増えているが、買取制度が終わってしまえば工事も一気になくなるリスクが潜んでいる。

今は大きな収益を上げていても、将来的なリスクを見越してM&Aによる譲渡に踏み切る事業者も出てきている。いずれはこのようなリスクが表面化して、太陽光発電事業の周辺業者によるM&Aが活発化すると思われる。

M&A情報誌「SMART 2018年春号」の記事を基に再構成しております
まとめ:M&A Online編集部