ファンドが「コロナ禍倒産」にブレーキ 中小の事業承継にも注力

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コロナ禍倒産が急増する中、中小企業基盤整備機構(東京都港区)は、新型コロナの影響を受けた中小企業を対象に、企業価値を高めて売却するバイアウト投資を行う「MCP Familiar投資事業有限責任組合」に、25億円を出資することを決めた。

東京商工リサーチによると、コロナ禍倒産は2022年9月(206件)、10月(226件)と2月連続で200件超え、11月も200件を超える見込みという。すでに2022年の累計の倒産件数は10月までに1832件に達し、2021年の件数を超えている。

中小機構では、コロナ禍で経営状況が悪化した中小企業の経営力強化を目的に、他のファンドにも出資する計画で、コロナ対策として実施してきた政府による補助金や支援金に代って今後は、ファンドによる経営支援に関心が集まりそうだ。

MBOで収益化

「MCP Familiar投資事業有限責任組合」は、ファンド運営会社のMCPファミリア(東京都千代田区)が管理するファンドで、出資先企業が実施するMBO(経営陣による買収)を収益確保の基本手段としている。同ファンドでは引き続き地域金融機関などの出資者の募集を行い、総額60億円にまで規模を引き上げる計画という。また同ファンドは、事業承継問題にも取り組む方針で、MBOだけでなく、経営権を握らないマイノリティ出資などをも行い、中小企業の成長を支援する。

現在日本では60%ほどの中小企業が後継者不在に悩んでおり、コロナ禍による業績悪化などが重なり、事業継続を断念するケースが想定されることから、事業承継支援が重要視されている。

こうした状況を踏まえ中小企業庁は、従業員承継や第三者承継(M&A )による事業承継を支援する姿勢を強めている。

帝国データバンクが2022年11月16日に公表した調査結果によると、2022年の代表者の就任経緯では、買収や出向を中心にした「M&Aほか」の割合が20.3%となり、2011年の調査開始以降初めて20%を超えた。

また具体的な後継候補では「非同族」が36.1%となり、こちらも初めて「子供」を上回り「非同族」が首位に立つなど、従業員承継や第三者承継が進んでいることが浮き彫りになった。

コロナ禍で業績の悪化した企業の支援だけでなく、事業承継でもファンドの役割は大きくなりそうだ。

文:M&A Online編集部