初の「中小PMIガイドライン」を策定、事業承継指針も改訂 中小企業庁

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経済産業省

中小企業庁、円滑なバトンタッチと経営統合を促進

中小企業庁は3月17日、中小M&A実施後の経営統合(PMI)に関する初の指針として策定した「中小PMIガイドライン」と、中小企業の円滑な事業承継を推進する「事業承継ガイドライン」の改訂版を公表した。新型コロナウイルスの影響で保留されているケースが少なくないとみられる事業承継と、順調な経営統合を促す手引きとなることが期待される。

中小PMIガイドライン、領域や手順などを記載

中小PMIガイドラインは、事業を引き継ぐ譲受側がM&A後のPMIの取り組みを適切に進めるのが目的で、PMIの成否を占うM&Aプロセスを含めた取り組みの「型」を時系列で整理。PMIを構成する「経営統合」「信頼関係構築」「業務統合」の3領域を網羅する手順を体系的にまとめた。

中小PMIの全体像などを記した第1章の「総論」と、業務領域別の具体的な取り組みなどを紹介した第2章の「各論」が柱。「総論」では「M&A初期検討」「“プレ”PMI」「PMI」「“ポスト”PMI」の段階別で求められる施策や譲受側・譲渡側の役割分担、着手すべき課題の優先順位の決め方などを示した。

「各論」には、経営資源に制約のある比較的小規模な中小企業でも対応できる「基礎編」と、必要に応じてより高度な取り組みに挑戦する際に役立つ「発展編」を記載。「基礎編」では主にM&A成立後100日から1年程度まで、「発展編」では「経営統合」「業務統合」に関する中・長期的な行動を示した。

また、PMIへの対応の重要性を身近に感じてもらうため、具体的なポイントや問題点を明記した成功・失敗事例も掲載した。

中小PMI支援、中小企業診断協会と連携へ

中小企業庁は、中小M&Aで引き継いだ事業の継続・成長に向けた「中小PMI支援メニュー」も策定。47都道府県にある国の事業承継・引継ぎ支援センターが2022年度から中小企業診断協会と連携し、地域の実情に応じて中小企業診断士を紹介する。双方の業務遂行に必要な範囲で、中小PMIに関する人材育成など組織的な取り組みにも乗り出す。

2022年度以降はPMIに関するセミナーや研修会などの実施、事業承継・引継ぎ補助金などの支援を通じたPMI実践機会の提供、中小企業診断士にガイドラインの理解を促す枠組みの導入も計画している。

5年ぶりに事業承継ガイドラインを改訂

また、5年ぶりに改訂された事業承継ガイドラインには、前回改訂時以降に生じた事業承継の状況変化や、新たに認識された課題と対応策を中心に反映。近年増えつつある従業員承継や第三者承継(M&A)に関する説明などを充実し、従業員承継については後継者の選定・育成プロセスを詳細に記した。第三者承継に関しても、2020年3月に国が策定した中小M&Aガイドラインなどの内容を取り込んだ。

さらに、事業を引き継ぐ後継者目線に立った説明も拡充。事業承継に踏み切ることで企業の売上高や利益が成長する傾向にあることや、事業承継に向けた経営改善(磨き上げ)には現経営者と後継者候補が協力して取り組むのが効果的であることなどを示した。

事業承継支援策を別冊にまとめる

このほか、法人版と個人版の事業承継税制、所在不明株主の整理に係る特例などの支援措置についての詳細な説明を更新・追加。事業承継に関する主な支援策一覧を新たに別冊で作成した。

経済産業省が策定した第三者承継支援総合パッケージなどにより、中小企業のM&Aは増加傾向にあるが、2021年の後継者不在率は前年度1.0ポイント増の58.6%(東京商工リサーチ調べ)と高止まりしたまま。コロナ禍が続く中、同年の休廃業・解散件数は4万4377件(同)と過去最多だった前年を10.7%下回ったものの、2000年以降では3番目の高水準で、倒産件数(6030件)の7倍超に上っている。

文:M&A Online編集部

関連リンク:
中小PMIガイドライン(概要)(METI/経済産業省)
「中小PMI支援メニュー」を策定しました (METI/経済産業省)
中小企業の事業承継・引継ぎ支援に向けた 中小企業庁と一般社団法人中小企業診断協会の連携について (METI/経済産業省)
事業承継に関する主な支援策(一覧)(METI/経済産業省)