事業者の自己変革をテーマに 2022年版中小企業白書

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政府は4月26日、2022年版の中小企業白書・小規模企業白書を閣議決定した。今回の白書では事業者の「自己変革」をテーマに、ウィズコロナ、アフターコロナの各フェーズにおいて事業者にとって必要な取り組みを紹介・分析している。

新型コロナウイルスの影響の長期化で経営環境の厳しさが増す中、2021年のM&A件数は過去最多の4280件で前年比550件増(レコフデータ調べ)を記録。売り手企業の経営者年齢は60歳代以上が67.2%を占めた中、後継者不在率は前年比3.6ポイント減の61.5%に低下した。

コロナ禍の影響「継続」、73.8%に増加

中小企業白書によると、コロナ禍による企業活動への影響が「継続している」と答えた企業の割合は73.8%で、前年より2.5ポイント増加。金融支援拡大や持続化給付金の効果で2021年の倒産件数は6030件と2年連続で前年を下回った半面、休廃業・解散件数は調査開始(2000年)以来3番目に多い4万4377件(東京商工リサーチ調べ)で高止まりしている。

黒字廃業の減少でM&Aの重要性が高まる

また、休廃業・解散企業は2014年から一貫して60%以上が黒字だったが、2021年は56.5%にとどまった。コロナ禍がさらに長引いた場合は31.1%の企業が1年以内に廃業を検討する可能性を示しており、経営資源の散逸を防ぐ有力な手段になり得るM&Aの重要性が増している。

M&Aを実施した買い手企業は商圏拡大、商品・サービス拡充による売り上げ・利益アップ、仕入れ・販売コスト削減に満足している割合が圧倒的に多い。経営者年齢が40歳代以下の売り手企業も経営資源の獲得で「事業の成長・発展」を目指すケースが多く、M&Aが企業の成長戦略として広く活用されている実態がうかがえる。

実務的障壁の解消が課題に

一方、売り手としてM&Aを実施する際は、経営者としての心理的な抵抗感だけでなく、「相手先(買い手)が見つからない」「仲介などの手数料が高い」など実務的な障壁が立ちはだかる。買い手も「期待する効果を得られるかよく分からない」「判断材料としての情報が不足している」といった課題を抱えており、M&Aプロセスにおける情報収集や判断の助言などM&A支援機関によるサポートの充実が求められている。

このほか、中小企業の自己変革に必要な取り組みを金融機関などの支援機関に複数回答で聞いた結果、「経営課題の解決に向けた具体的な行動計画の策定」(60.0%)、「経営課題の把握」(59.6%)が突出。事業再生・承継を含む課題解決策を探る上では、支援機関が経営者などとの信頼関係を築き、対話を重視した伴走支援を行うことが有効と結論付けた。

中小企業庁は「中小企業におけるM&Aは近年増加傾向で、経営者の事業承継に対する意識の変化が見られる。経営者年齢が若い企業は新たな取り組みに果敢にチャレンジする傾向にあり、事業承継を適切に実施して次世代の後継者に引き継いでいくことが重要」と分析している。

文:M&A Online編集部

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