政府は5月31日、経済産業省、厚生労働省、文部科学省が共同でまとめた「2022年版ものづくり白書」を閣議決定した。
新型コロナウイルス感染拡大や原材料価格高騰、部素材不足などの影響が大きい中、日本企業が海外企業との競争で不利な状況に置かれている原因について、1割超の製造業者がM&Aを駆使した事業再編の難しさを挙げた。
海外企業と比べて不利な原因は「人件費が高い」(62.3%)、「電力などのインフラコストが高い」(34.0%)、「人員整理がしにくい」(32.4%)が上位を占めた。一方、11.9%は「M&Aによる大胆な事業再編がしにくい」と訴え、10.3%が「廃業コストが大きく低収益の企業が存続しやすい」と指摘した。
直近2、3年間で実施した企業行動は「値上げ(原材料高騰による価格転嫁など)」「賃上げ」がそれぞれ40%余りを占め、「積極的な投資」も32.5%に達した。「事業転換または新事業への参入」は15.0%、「M&A」は6.4%で、「M&A」は中小企業が5.4%だったのに対し、大企業は3倍余りの18.8%に上った。
また、直近1年間では半数超の製造業者が金融機関からの借り入れなどで「資金調達をした」と回答。設備資金の使途は「土地・建物・機械・備品・車両の購入」(64.7%)、「修繕資金」(29.6%)、「ソフトウェアの導入」(15.9%)が上位で、これらの後に「企業の買収」(2.0%)が続いた。
2021年の製造業の倒産件数は664件(前年比251件減)、休廃業・解散件数は4985件(同532件減)だったが、後継者を選定済みの経営者は60代が38.4%に過ぎず、70代も58.4%と6割に満たない。
製造業の開業事業所数は5278件(同543件増)と2年ぶりに増えたが、非製造業を含む全国の企業は後継者難倒産が増加傾向で、予断を許さない状況が続いている。
ものづくり白書は「日本企業と海外企業の間では法規制、インフラコスト、商習慣などにさまざまな違いがある。今後も続くと考えられる事業環境の変化に対応するには、利益を有形・無形固定資産や研究開発などに積極的かつ効率的に投資し、稼ぐ力を高めていくことが重要」と説いている。
文:M&A Online編集部