経済産業省は3月31日、中小企業のM&Aのさらなる促進を図る「中小M&Aガイドライン」を策定した。2015年3月公表の事業引継ぎガイドラインを全面改訂したもので、中小企業経営者とM&A支援機関の双方に向け、M&Aの適切な進め方を示している。
事業引継ぎガイドライン公表から約5年が経過し、中小企業のM&A市場は着実に広がっている。1987年に24社だった専門業者の数も、2019年には10倍超の313社まで増えた(レコフ調べ)。
一方、中小企業経営者の中には「M&Aに関する知見がなく、進め方が分からない」「支援機関への手数料の目安を見極めにくい」「M&A支援に不信感がある」といった要因から、後継者不在でありながら社外の第三者への事業承継をためらう経営者も少なくない。
M&A市場は日本経済における数少ない成長分野とされる。国は2029年頃までに官民合わせて年間6万件のM&A実施を目指している。新ガイドラインは政府主導によるM&A業界団体が存在しない中、国がM&A専門業者や金融機関、商工団体などの支援機関に対して明確な行動指針の遵守を求める位置付けとなっている。
新ガイドラインは「後継者不在の中小企業向けの手引き」と「支援機関向けの基本事項」の計2章で構成。中小企業経営者にはM&Aの基本的なプロセスや交渉過程の留意点、仲介手数料の目安などを示した。経営環境などが異なる約20の中小M&A実践例も紹介し、M&Aをより身近なものとして理解しやすいよう工夫した。
支援機関に対しては、中小企業の利益の最大化と支援機関相互の連携強化を図る基本姿勢を提示した。それぞれの支援機関の適切な役割も整理し、必要な研鑽(けんさん)と中小M&A支援の質の向上を求めた。
新ガイドライン周知に向け、経産省は「全国48カ所の事業引継ぎ支援センターと、センターに登録する全496機関にガイドライン遵守を義務付け、中小M&A支援に関わる幅広い機関にも遵守を求める」と説明。分かりやすいハンドブックの作成、セミナーなどを通じた普及・広報も計画している。
文:M&A Online編集部