方法1:二段階に分けて譲渡する

一般的に中堅·中小企業のM&Aにおいては、株式の100%を買い手に譲って会社の支配権(議決権)が移管されます。その取引を二段階に分けて、例えば当初の取引では全株式の3分の2以上を買い手に譲渡して支配権を移管し、創業者は従来通りに経営を継続する。その後、業績が伸びたら残りの株式を譲渡する方法です。

二段階目は業績が伸びた後の株式価値なので、一段階目の株価よりも高値で譲渡することができ、その差額が売り手のインセンティブとなります。

方法2:特別目的会社(SPC)を使い二段階で譲渡

ファンド等が対象会社を買収したのち、株式上場(IPO)を目指す場合に用いるのが特別目的会社(SPC)を使った方法です。

創業オーナーはファンドが設立したSPCに全株式を譲渡するとともに、その譲渡対価の一部をSPCに再出資。その後、ファンドの支援のもとで業績を向上させたうえで、早期に上場を実現させます。そうすると、再出資した分がIPO後に何倍もの価値で売却でき、その差額がインセンティブとなります。

方法3:アーンアウト条項を付ける

近年のアメリカのM&Aで多く用いられているのが「アーンアウト条項」を付けたM&A契約です。アーンアウト条項は「条件付取得対価」とも呼ばれ、M&A完了後に特定の条件を達成した場合、買い手が創業オーナーに追加の対価を支払う条項になります。

方法1(二段階に分けて譲渡)と比較すると、M&Aでいったん「全株式の譲渡=支配権の移転」は完了します。買い手にとってはM&Aを分割払いにするイメージで、一度のキャッシュアウトが少なく済むとともに、不確実な業績見込みに対するリスクヘッジとなります。

創業オーナーにとっても、条件達成の状況によって当初より多くの対価を手に入れられるメリットがあります。達成条件はさまざまで、例えばM&A完了後の3年間の営業利益が毎年0億円以上という財務指標になることもあれば、対象が医薬品メーカーの場合は新薬の認可取得が条件になることもあります。

M&A情報誌「STRIKE」2019年4月号の記事を元に再構成しております