【M&A相談所】事前に譲渡後のセカンドライフを考えるべきか

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※画像はイメージです

M&A相談所 その時、どうする?

Question

経営者はM&A前に『会社を譲渡した後のセカンドライフ』について考えておくべき?

将来的にM&Aによる会社の譲渡を考えています。私は会社経営一筋で生きてきたため、会社を譲渡した後のセカンドライフについて、これまで考えたことがありません。

株式を譲渡して得られる資金をどのように運用するか、といったアイデアもありませんし、M&A後のことをどう考えるべきか、そもそも会社を譲渡するべきなのか悩んでいます。どのように考えればよいでしょうか?

Answer

他の経営者のセカンドライフを参考にしよう

「会社を譲渡した後の人生設計」を立ててからM&Aを行うか、M&Aを行ってからそれを考えるかは、人それぞれです。ご相談者のように、仕事を第一に考えて会社経営をされている経営者は多いです。譲渡後のことまで考えていないという方は少なくないでしょう。

セカンドライフのイメージを持てずに不安なのであれば、他の経営者が譲渡後の人生をどのように過ごしているか事例を聞いて、イメージづくりの参考にされてはいかがでしょうか。

ケース1 故郷への移住の準備とM&Aを併行して進める

ある経営者は、譲渡する前から、M&A後は東京を離れ故郷に移住することを計画されていました。親族や友人が多い故郷で第二の人生を過ごすことを強く望んでいたそうです。そのため、買収企業に希望条件として「引き継ぎ期間を短くしたい」と伝えました。M&Aと併行して故郷での物件探しや現在の住宅の売却を進め、早期の移住を実現されたそうです。

ケース2 譲渡後も社長を続けながら、やりたいことを探す

別の経営者は、譲渡後も3年以上は経営者として働き、毎月の役員報酬を得たいという希望を買収企業に伝えました。「今は具体的なセカンドライフを考えられない、3年の間に自分が本当にやりたいことを探したい」というご自身の意向によるものでした。先日、その方に久しぶりにお電話したところ、「今は農業をやっているよ!」と楽しそうに語っておられました。

ケース3 精力的な投資活動で、現役時代と変わらぬ収入を

社長在任中から投資がお好きで、「譲渡後も投資活動を精力的にやりたい」とおっしゃっていた経営者もいます。その方に譲渡から数年後にお会いしたときには、「資産運用がうまくいっている。社長だった頃とそんなに変わらない手取り収入があるよ」と少し得意げなお顔をされていました。

現役時代は役員報酬の約半分を税金で納められていましたが、上場株式等の譲渡所得や配当所得の税金は約20%で済みますので、手取りはあまり変わらない、とのこと。投資に詳しいファイナンシャルアドバイザーの意見を聞き、分散投資をしていると話されていました。

経営者がご自身のセカンドライフをどうしたいのか、検討する時間を作ることはとても大切だと思います。また、会社を譲渡することで手にされる現金は、経営者のより良い人生を実現する一助となります。お金を使う、親族に残す、運用する……どのように資産の活用や運用をするかについては、多くの専門家がいますので、詳しくは専門家にご相談されるのが一番かと存じます。

なかには、「今すぐセカンドライフをどうするか決められない」ことを不安に感じておられる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、不安を感じるということが、充実したセカンドライフの実現に向けて踏み出された一歩ではないでしょうか。

本記事は、M&A情報誌「STRIKE」No.39 より再編集しております