スカイマークの再生支援が完了、逆風下のタイミングで上場する理由は?

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画像はイメージ(Photo by PAKUTASO)

2015年1月に民事再生法の適用を申請し、投資ファンドのインテグラル(東京都千代田区)やANAホールディングス<9202>の支援のもとで再生に取り組んでいたスカイマーク<9204>が、2022年12月14日にグロース市場に上場します。

しかし、2022年3月期は67億2,900万円の純損失(前年同期は163億4,200万円の純損失)を計上しており、コロナ禍からの完全回復からは程遠い状況。それに加えて、株式市場はアメリカの金融引き締めの影響で冷え込みが厳しさを増しています。

スカイマークのような大型案件は、ただでさえ初値がつきにくいもの。この逆風下でも上場しなければならなかったのは、止むに止まれぬ事情がありそうです。この記事では以下の情報が得られます。

・スカイマークの業績推移
・再生支援の内容

急速な円安の進行で旅客機の購入余力を失う

スカイマークが2015年に経営破綻した主要因がエアバスの違約金。

スカイマークは2011年から2012年にかけて、超大型旅客機のA380を6機を導入する巨額の投資計画を立てていました。2011年はドル円が史上最高値となる75円台で推移しており、スカイマークに追い風が吹いていました。しかし、2012年12月に安倍晋三政権が発足。アベノミクスが始まると、急速な円安が進行します。2013年にドル円は100円台に突入しました。

スカイマークはコスト高で赤字に陥ったうえ、ドルで決済するA380を導入する余力を失ったため、購入をキャンセルします。250億円は購入資金として支払い済みでしたが、追加で700億円の違約金を支払うよう求められました。

更にスカイマークは2014年にGC注記(継続企業の前提に重要な疑義)がついてしまいます。これによって金融機関や増資による資金調達の道が閉ざされました。2015年1月に民事再生法の適用を申請しました。

再生支援に名乗りを上げたのが投資ファンドのインテグラルでした。共同スポンサーとしてANAホールディングスが出資を決めました。スカイマークは180億円の第三者割当増資を実施、インテグラルが50.1%、ANAが19.9%を引き受けて180億円を調達する計画を立てます。

スカイマークは、2015年9月に当時インテグラルの代表取締役パートナーだった佐山展生氏を代表取締役会長、日本政策投資銀行(東京都千代田区)の取締役常務執行役員を務めた市江正彦氏を代表取締役社長とする、新経営体制で再スタートを切りました。

なお、日本政策投資銀行は三井住友銀行(東京都千代田区)との折半でUDSというファンドを組成し、スカイマークに対しておよそ60億円を出資しています。

スカイマークは再生支援が始まった直後の2016年3月期に15億円の営業黒字を出しました。突発的な要因で経営難に陥ったため、経営正常化は順調に進みました。このころは2020年ごろの再上場が期待されていました。

しかし、新型コロナウイルス感染拡大という思いもよらない出来事が起こります。

コロナ禍でファンドが満期を迎える

スカイマークはコロナ禍の2021年3月期に163億4,200万円の純損失を計上しました。

※「新規上場申請のための有価証券報告書」より筆者作成

資金繰りに苦慮したスカイマークは日本政策投資銀行などから40億円を調達。更に金融機関からの融資300億円の返済期限の延長を決めました。

更にスカイマークは2021年3月末に自己資本比率が30.0%から12.2%まで低下。資金繰りに窮したうえに財務体質がぜい弱になります。その改善策として、2021年7月ANAなどから資本性がある劣後ローンで40億円を調達すると発表しました。

しかし、2022年3月期に67億2,900万円の純損失を出し、自己資本比率は9.9%まで低下しています。

航空需要の回復を受けて2023年3月期第2四半期は27億400万円の純利益を出しているものの、十分な業績回復を待たずに上場する背景には、素早く財務基盤を立て直す必要に迫られたものと考えられます。

また、インテグラルが組成したファンドが満期を迎えるという別の要因も絡んでいます。スカイマークに出資しているファンドは、インテグラル2号投資事業有限責任組合。このファンドの設立は2012年5月。このファンドに27億円を出資する中小企業基盤整備機構(東京都港区)によると、存続期間は10年としています。

■インテグラル2号投資事業有限責任組合の詳細

※「中小企業成長支援ファンド「インテグラル 2 号投資事業有限責任組合」 に出資を行う組合契約を締結」より

このファンドが満期を迎えました。

インテグラル2号投資事業有限責任組合は、スカイマークに対して81億2,000万円を出資しています。

■スカイマークの第三者割当先

※「スカイマークのスポンサー契約及び株主間契約の締結について」より

スカイマークの上場時の想定価格は1株1,150円。インテグラル2号投資事業有限責任組合の売出は2,812,500株。単純計算で32億3,400万円を手にすることになります。持株すべてをこの価格で売却すると、233億4,500万円。リターンはおよそ3倍。しかし、市況の悪化によって株価は下がる可能性は高いと考えられます。

仮に800円で上場後に残った持ち株すべてを売却すると139億9,000万円。そこに上場時の売却分を足すと172億2,400万円。出資資金のおよそ2倍。航空需要の縮小と投資期間の思わぬ延長、そして株式市場の冷え込みにより、インテグラルは期待していたリターンが得られないかもしれません。

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