すかいらーくホールディングス、松屋フーズホールディングス、大戸屋ホールディングス…。いずれも外食業界を代表する顔ぶれだが、この3社には意外なところで共通項がある。
本社がいずれも「三鷹」にあるのだ。正確には所在地は三鷹市の隣の武蔵野市なのだが、最寄り駅となるとJR三鷹。駅の北側は武蔵野市で、松屋フーズの本社ビルは駅の目の前にある。大戸屋は歩いて2~3分、最も離れているすかいらーくでも10分ほど。
2020年の外食業界を最も騒がせたといえば、定食チェーンの大戸屋を巡る買収劇。仕掛けたのは居酒屋「甘太郎」「北海道」などを展開するコロワイド。敵対的TOB(株式公開買い付け)に発展し、ニュースで両社の対立がたびたび取り上げられたのは記憶に新しい。
大戸屋は1958(昭和33)年に池袋に“全品50円均一”の「大戸屋食堂」を開いたことにさかのぼる。「三鷹」に本社事務所(大樹生命三鷹ビル内)を構えたのは2010年で、この時は新宿から移転した。
今回の買収劇の背景には大戸屋創業家の内紛が絡んでいるが、大戸屋はコロワイドの軍門に下り、コロワイドは11月初めに新社長を送り込んだ。大戸屋は9月末時点で14億円の債務超過に陥っており、コロワイド傘下で再建を目指す。
コロワイドが得意とするセントラルキッチン(食材の仕入れ・加工を工場で一括集中)方式と、大戸屋の看板である店内調理をどう折り合いをつけるかも注目点だ。
「三鷹」を半世紀近く本拠とするのはファミレス最大手、すかいらーく。1962年に創業した食品スーパーがルーツだが、業態転換してファミレスに進出し、1970年に第1号店を開店した。2006年に創業家によるMBO(経営陣による買収)で非公開化し、株式市場からいったん退場。2014年に再び上場(東証1部)するなどの変遷を経ながらも、「三鷹」一筋だ。
現在、「ガスト」「バーミヤン」「ジョナサン」などを中心に約3200店舗を展開する。ファミレスの代名詞だった「すかいらーく」の店名は2009年で終了。現在も社名として使う、すかいらーくは食品スーパー時代の創業地が「ひばりが丘団地」だったことにちなみ、ヒバリの英語名(skylark)からとった。
牛丼大手3社の一角を占める松屋フーズは三鷹駅前の新本社完成に伴い、2006年に練馬区下石神井から移転した。同社は1966年に練馬区内で中華飯店「松屋」として創業したことに始まる。主力ブランドの「松屋」を大黒柱とし、とんかつ、鮨、ステーキ、そばなど幅広い業態を展開中だ。
すかいらーく、松屋は東証1部、大戸屋はジャスダックに上場するが、「三鷹」には非上場ながら居酒屋首位のモンテローザが本社を構える。「白木屋」「魚民」などで知られる同社だが、1996年に杉並区から三鷹駅北口に移転してきた。現本社ビルは、実はビジネスホテルだった建物。
図らずも、外食大手が集結した格好の「三鷹」だが、その優位性は東京の西に広がる多摩地区の玄関口に位置し、交通至便であること。新宿から電車で20分ほど。JR三鷹駅には中央(本)線・総武線に加え、東京メトロ東西線が乗り入れる。しかも総武線と東西線は始発駅で、ほぼ確実に座って通勤できるのが魅力だ。
新型コロナ禍で苦戦を強いられる外食業界にあって、さて、「三鷹」銘柄はいかに反転攻勢に出ようとしているのか。
文:M&A Online編集部