すかいらーくホールディングス<3197>が、国内と海外の公募増資及び第三者割当増資によって426億円を調達します。すかいらーくの2020年12月期売上高は前期比23.2%減の2,884億3,400万円、172億1,400万円の純損失(前年同期は94億8,700万円の黒字)を計上していました。2021年4月の売上高は2019年比で70%に留まっています。
しかし、今回のすかいらーくの大型調達は運転資金の確保ではなく、大がかりな出店をして新たなライフスタイルに合わせた食を提供する計画です。
この記事では以下の情報が得られます。
・調達した資金の使い道
・ロイヤルホールディングスとの比較
発行価格は1株1,495円。5月31日の株価終値1,542円の3.05%ディスカウントとなります。日本と海外の公募増資、第三者割当増資で、すかいらーくが手にする上限概算額は426億円とみられます。
新型コロナウイルスの影響で大赤字を出したとはいえ、すかいらーくの2020年12月末の自己資本比率は24.4%。2019年12月末と比較して3.3ポイントほどしか下がっていません。
今回の調達は急場を凌ぐものというよりも、新常態(ニューノーマル)に向けた大型投資としての位置づけが強くなっています。
すかいらーくは2020年12月期に132店舗もの大規模退店を実施しました(2019年12月期は58店舗の増店)。近年は特に「から好し」の出店と業態転換に力を入れています。
■すかいらーくの店舗開発の進捗(2020年通期)
すかいらーくは、調達した資金で2021年に日本と中国で49店舗、2022年に41店舗、2023年に44店舗を出店する計画です。
■すかいらーくの新規出店計画
エリア | 出店時期 | 店舗数 | 投資額 |
---|---|---|---|
日本 | 2021年12月期 | 36店舗 | 21億2,800万円 |
日本 | 2022年12月期 | 30店舗 | 24億円 |
日本 | 2023年12月期 | 30店舗 | 24億円 |
中国 | 2021年12月期 | 13店舗 | 8億5,100万円 |
中国 | 2022年12月期 | 11店舗 | 7億9,500万円 |
中国 | 2023年12月期 | 14店舗 | 10億9,500万円 |
※新株式発行並びに株式売出しに関するお知らせ「重要な設備の新設」より
新規出店のほかに業態転換を2021年に57店舗、2022年と2023年に30店舗を行い、店舗のリニューアルを200~400店舗実施する予定です。また、出店や業態転換以外に工場設備とIT投資に126億円を投じる計画。これは通販サイトの立ち上げや配食サービスなどを行う製造ラインを新しく整備するためです。
すかいらーくはいち早く自社配送のデリバリーに対応する仕組みを構築していました。2020年12月末で自社配達店舗数は前年の20%増となる1,247店舗。共同デリバリーシステムを備え、配達員同士をアプリで繋ぎ、情報を共有して配送効率を上げています。
配送インフラはすでに整っており、通販の仕組みを取り入れることによって自社配送システムが今まで以上に活用できるのです。
一方で見通しが立たないのが、ロイヤルホストなどの外食チェーンを運営するロイヤルホールディングス<8179>。2020年12月期の売上高は前期比40.0%減の843億400万円でした。275億200万円の純損失(前年同期は19億2,300万円の黒字)を計上しています。ロイヤルホールディングスの純損失額はすかいらーくを1.6倍上回りました。
■すかいらーくとロイヤルホールディングス2020年12月期業績比較(単位:百万円)
すかいらーく | ロイヤルHD | |
---|---|---|
売上高 | 288,434 | 84,304 |
営業損失 | -23,031 | -19,269 |
純損失 | -17,081 | -27,532 |
※すかいらーくホールディングス2020年度通期決算説明資料より
ロイヤルホストやてんやのレストラン事業の売上高は26.1%減の462億5,400万円となり、売上の減少幅はすかいらーくと近い数字になっています。セグメント損失は38億1,300万円(前年同期は23億7,900万円の黒字)でした。
影響が大きかったのは2004年7月に連結子会社化したリッチモンドホテルを運営するアールエヌティーホテルズ(世田谷区)。売上高は前期比53.8%減の139億9,100万円、69億9,600万円のセグメント損失(前年同期は36億2,200万円の黒字)を出しています。
ロイヤルホールディングスは2021年2月15日に双日<2768>と資本業務提携契約を締結。普通株式13.3%を割り当てました。それに加えて新株予約権も発行する予定です。
ロイヤルホールディングスは新型コロナウイルス感染拡大前、M&Aによって機内食や企業・病院の食堂の運営会社を子会社化するなど、事業を多角化していました。食を取り巻く環境が激変したことにより、複合化した事業を解体する構造改革を進めています。
機内食関連事業を行うロイヤルインフライトケイタリング(大阪府泉南市)は、双日が60%の株式を取得して連結子会社化しました。ロイヤルホールディングスのグループ傘下にあったハブ<3030>の株式は、ミクシィ<2121>の投資ファンド「Tech Growth Capital」に20%を売却。持ち分法適用会社から除外されました。
ロイヤルホールディングスは経営の効率化を急ピッチで進めており、新常態への備えは次のステップとなりそうです。
ガストとから好しの複合店「から好しINガスト」で新常態に合わせた店舗を展開し、大型の資金調達で出店攻勢に出たすかいらーく。事業整理に足をとられ、次なる一手を打ち出せないロイヤルホールディングス。新型コロナウイルスは外食企業の明暗をはっきりと浮かび上がらせました。
文:麦とホップ@ビールを飲む理由