「新東京グループ」持ち株会社制のもとで経営を多角化|【東証PRO】 

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新東京グループの東京オフィスは帝国ホテルタワー館(写真中央の奥、東京・内幸町)に構える

千葉県松戸市に本社を構える新東京グループ(吉野勝秀社長)<6066>の上場は、2008年にプロ向け市場として東京証券取引所にTOKYO PRO Marketという新市場が誕生して間もない2012年9月。TPM上場企業の中では“老舗格”の企業である。

TPM上場の頃から新東京グループは持ち株会社としてグループ企業の経営の指揮をとってきた。上場当初は2社だったグループ会社も現在は6社になっている。

TPM上場後は機動的にM&A戦略を展開

新東京グループは1992年 7月、産業廃棄物収集運搬業を目的として、千葉県松戸市に新東京開発として発足した。千葉県をはじめ関東各県の産業廃棄物収集運搬業の許可を得て、営業エリアを拡大した。

本社を置く千葉県では産業廃棄物収集運搬業だけでなく、一般建設業の許可を得て事業を多角化。とび・土工工事業の指名業者ともなった。一方、本業関連では産業廃棄物中間処理場「シントウキョウマテリアルプラント」を設立した。

グループ内再編に動き始めたのは2006年頃から。2006年12月、不動産管理部門を切り離すため、シントウキョウエージェントを会社分割により設立した。さらに、2009年 8月には千葉県柏市に産業廃棄物中間処理施設の運営を目的としたエコロジスタを設立。そして2012年 6月には持ち株会社制に移行し、新東京グループを株式移転により設立した。

持ち株会社の新東京グループの傘下に、新東京開発とエコロジスタがぶら下がる形となった。そして2012年9月に新東京グループがTPMに上場した。その目的は、認知度の向上というより、むしろ資金調達手段の拡充にあったとみられる。また、上場と同時にM&A戦略が本格始動した。

2013年4月にヨコヤマ(2017年1月に新東京トレーディングに社名変更)を子会社化し、マテリアル再生事業へ進出した。2014年5月には太陽光発電事業を営む新東京エナジーを設立した。

そして2019年には、民事再生手続きに入った事業の再生スポンサーとなる手法でM&Aを進めていく。この年の4月にグリーンシステムズ、6月には全建設共同事業組合の再生スポンサーをそれぞれ引き受けた。さらに12月には、民事再生手続中だった産業廃棄物業者のグリーンシステムズの全株式を取得し、子会社としている。

2019年11月に環境関連施設の保有と運用管理を目的とした株式会社シントウキョウグロースキャピタルを設立。他方、同年5月には新東京トレーディングの株式を譲渡するなど、事業の売却も行っている。

M&Aを重ね、現在、新東京グループの連結子会社は、創業時からの中核企業である新東京開発をはじめ、エコロジスタ、新東京エナジー、新東京ソイルゲート、シントウキョウグロースキャピタル、グリーンシステムズの6社。グループ全体で人員は現在100人を超えている。

新型コロナ禍で厳しい局面に

新東京グループの直近の業績は下表のとおり(単位百万円、%は対前期増減率、▲は減少)

売上高 営業利益 最終利益
2019年5月期 3,870 3.5% 170 ▲26.0% 89 ▲9.2%
2020年5月期 3,182 ▲17.8% 43 ▲74.5% 22 ▲74.6%

部門別の売上高構成をみると、廃棄物の収集運搬・中間処理・再資源化に関する事業が8割近くを占め、建設解体工事事業、メタルマテリアル事業(金属スクラップの取り扱い)、新エネルギー事業、復興事業、建材卸事業などが続く。

足元では建設投資が弱含みで推移しているほか、新型コロナ禍が重なり、中間処理施設への廃棄物の受け入れ量が減り、厳しい経営環境が続いている。

一方で、廃棄物の再資源化・リサイクルなど環境問題は持続可能な経済社会の実現に向け、待ったなしのホットコーナーにほかならない。成長戦略の次の一手が注目される。

文:M&A Online編集部