企業価値を下げない支援を「収益力改善支援に関する実務指針」

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「収益力改善支援に関する実務指針」を策定

円滑な事業承継への舵切りも視野に

中小企業庁の「中小企業収益力改善支援研究会」(座長・家森信善神戸大学経済経営研究所教授)は10月28日、「収益力改善支援に関する実務指針」を策定した。中・長期的な企業価値の向上を見据えた伴奏支援の手順と方法を明確にし、思い切った事業展開や円滑な事業承継などにも舵を切れる経営体制の整備につなげるのが狙い。

財務体質改善をにらんだ支援が不可欠

新型コロナウイルスの影響の長期化や原材料価格の高騰などで過剰な債務に苦しむ中小企業が増えている中、自力での再生が困難になった事業者に対する支援の重要性も高まっている。収益力などが著しく低ければM&Aによる再生を望んでも買い手がつかないことが多く、消滅の危機にさらされてしまいやすくなる。

収益力改善や事業再生・再チャレンジを促す支援策としては、経済産業省と財務省、金融庁が3月に「中小企業活性化パッケージ」を策定。9月には発展形の「中小企業活性化パッケージNEXT」をまとめ、資金繰り需要などを満たす制度の拡充に力を入れてきた。一方、持続的・安定的な収益力を維持する上では、財務体質の改善をにらんだ支援も不可欠となる。

経営者と支援者の役割を明示

実務指針では、経営者自身の気付きによる支援ニーズの掘り起こしや支援者の相談対応、経営改善計画の策定支援などに着眼。金融機関を含む取引先などとの信頼関係を高めるため、ガバナンス体制の整備に係る計画策定支援の重要性も示した。実行段階の伴奏支援については、数値計画などに沿った取り組みの進捗状況を定量的に確認すべきとしている。

中小企業庁は認定支援機関による「経営改善計画策定支援事業」(405事業)と「早期経営改善計画支援事業」(ポストコロナ持続的発展計画事業)を実施しているが、これらに関わる認定支援機関にも実務指針に基づいたサポートを希求する。実務指針の中身は、中小企業を取り巻く経営環境の変化に合わせて適宜の見直しも想定されている。

止まらぬコロナ破たん、10月は「円安」倒産も4件

東京商工リサーチによると、新型コロナ関連の経営破たんは10月末時点で累計4,612件に到達。10月は月間最多の226件を数え、2カ月連続で初の200件台を記録した。10月は「円安」関連倒産も4件発生しており、為替を要因とする企業倒産も本格化する可能性が高まっている。

文:M&A Online編集部

関連リンク:収益力改善支援に関する実務指針(案)|中小企業庁