子は事業承継を望まない「無関心層」が最多 日本公庫の調査結果で

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「子どもの事業承継意欲に関する調査」結果を公表-日本公庫

後継者未定の事業、子は「無関心層」が最多

日本政策金融公庫総合研究所は10月28日、親(父母、義父母)が事業を経営している人、または経営していた人を対象に行った「子どもの事業承継意欲に関する調査」結果を公表した。後継者が決まっていないケースでは、親の事業の承継を望まない「無関心層」の割合が最も多く、第三者も含めた経営承継支援の必要性が改めて浮き彫りになった。

調査は2021年8月にインターネットで実施。全国の18~69歳から寄せられた2万件(うち詳細調査832件)の回答を集計した。

事業承継意欲について、母の事業は37.0%、義母の事業は46.2%が「承継するつもりはない」と回答。父の事業は50.0%、義父の事業も54.2%が同様の反応だった。「承継するかどうか、まだ判断できない」とした「未決定層」を合わせると、父、義父の事業を継ぐことに消極的な姿勢がそれぞれ70%前後を占めた。

中小企業経営にネガティブなイメージも

「承継するつもりがない理由」のうち、最も多かったのは「事業経営に興味がないから」(35.4%)で、「必要な技術・ノウハウを身につけていないから」(26.5%)、「自分は経営者に向いていないから」(26.2%)が続いた。「事業の先行きが不安だから」(16.0%)、「事業経営のリスクを負いたくないから」(15.3%)など将来の不確実性を考慮した回答もあった。

また、無関心層が抱く中小企業の経営者、個人事業主のイメージは「経営について自分で決めなければならない」「取引先や従業員に対する責任が重い」が37.4%ずつでトップに並んだ。「常に忙しい」も27.9%に上り、未決定層と同じくネガティブな捉え方が目立つ。

親の事業に関する知識や経験についても、「承継者」(親の事業を承継した人)の45.2%、「承継決定者」(承継することが決まっている人)の43.6%が「商品・サービスについて詳しく知っていた」としたが、無関心層の55.8%、未決定層の37.1%は知識や経験について「当てはまるものがない」と回答。無関心層の78.0%は、親の事業に必要な資格も「取得するつもりはない」ことが分かった。

無関心層の3割が「自身が承継しなければ廃業」

親の事業の業種は承継者、承継決定者、無関心層で建設業、未決定層は宿泊業・飲食サービス業がトップで、従業員規模はいずれの類型も1~4人が最多。親の事業の業況を「良い」としたのは承継者が18.7%、承継決定者は25.7%だった半面、無関心層は7.1%、未決定層では6.0%にとどまる。自身が承継しない場合の親の事業の先行きについては、無関心層の30.6%が「廃業する」とした。

このほか、新型コロナウイルスの感染拡大による事業承継意欲の変化に関しては、承継決定者も無関心層も「変わらない」が最多だった。一方、無関心層と未決定層では「弱くなった」「わからなくなった」が「強くなった」を大きく上回っている。

同研究所は「従業員への承継や第三者への譲渡などが事業継続の方法として注目されているが、後継者難の中小企業の廃業を減らす上では経営者が自分の子どもの承継意欲を高めることも重要」としている。

文:M&A Online編集部

関連リンク:
・日本政策金融公庫 ニュースリリース(2021年10月28日)
・「子どもの事業承継意欲に関する調査」結果