「GoToトラベル」も空港には届かず…店舗撤退が止まらない

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羽田空港国際線ターミナルのショッピングコート「江戸小路」

百貨店大手の三越伊勢丹ホールディングス<3099>が、中部国際空港で運営している「ISETAN CENTRAIR STORE」(イセタンセントレアストア)を2021年2月28日付で閉店することが決まった。このほかにも空港ターミナル内で営業する物販店や飲食店の撤退が相次いでいる。国の「GoToトラベル」で観光客は増えてきたが、本格的な回復は当分先との見方が広がっており、撤退の動きは止まりそうにない。

ターミナル空港でも撤退が…

イセタンセントレアストアは中部国際空港第一ターミナルの国内線出発制限エリア内で2016年10月にオープン。ビジネス利用者をターゲットに、紳士衣料や雑貨を販売していた。しかし、開業から赤字続きだった上に、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大で空港利用者が激減したため撤退を決めた。

こうした動きは他の空港にも広がっている。成田空港では2020年9月半ばの時点で空港内に出店する460店舗中264店舗が休業し、書き入れ時のはずだった8月の売り上げは前年同月比で9割以上も減少したという。すでに見切りをつけて閉店した店舗もある。テナントの撤退を食い止めようと、成田国際空港会社は最低保証賃料1年分の減免など総額66億円の支援を決めた。

羽田空港でも9月30日にキャラクターショップの「Hello Kitty Japan 羽田空港店」が閉店したほか、3月から8月にかけて少なくとも3店舗が撤退。国家戦略特区の目玉施設としてとして旧東京国際空港跡地に建設され、第3ターミナル(旧国際線ターミナル)と直結するホテル、商業施設、温浴施設などの複合施設「羽田エアポートガーデン」も2020年4月に予定していた開業を延期したままだ。

コロナ禍で開業が延期されている空港直結の複合施設「羽田エアポートガーデン」(住友不動産ホームページより)

テナント撤退で空港ビル会社が傾く可能性も

もともと就航便数が少ない上に、コロナ禍で減便を強いられている地方空港はさらに苦しい。富山空港では7月に「越中富山の薬売り」で有名な市販薬の老舗が出店していた「廣貫堂富山空港店」が撤退。那覇空港では6月に洋菓子販売の「Hanaha那覇空港店」が閉店。石川県の小松空港でもレストラン1店舗が8月に撤退している。

地方空港はスペースが狭いため出店数が限られ、1店舗でも撤退すると空港の利便性が著しく損なわれる。コロナ禍の第3波到来が現実となり、搭乗客でにぎわうはずの空港に再び閑古鳥が鳴く可能性も高まってきた。

さらにはコロナ対策によるリモート会議の定着で、平日利用を支えてきたビジネス客が戻らないのではないかとの懸念もある。エアポートショップの賃借料は、空港ビル会社にとって貴重な収益源だ。店舗の撤退を食い止められなければ、基幹交通インフラである空港ビル会社の存続にもかかわりかねない。

文:M&A Online編集部