新生銀行・関西スーパー・東京機械製作所…「劇場型」の買収攻防戦が相次ぐ

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SBIホールディングスの傘下に入った新生銀行(東京・日本橋室町の本店)

2021年のM&A戦線ではマスコミの報道がヒートアップする「劇場型」の攻防が相次いだ。新生銀行のTOB(株式公開買い付け)、関西スーパーマーケットの争奪戦、東京機械製作所をめぐる株式の買い占め問題だ。このうちの2つは最高裁の司法判断を仰ぐ異例の展開となった。

新生銀、SBIの軍門に下る

インターネット金融大手のSBIホールディングスが新生銀行(旧日本長期信用銀行)に仕掛けたTOBは敵対的買収に発展し、同行の大株主の国を巻き込んで連日、ニュースとなった。最終的に、新生銀行は対抗措置として打ち出した買収防衛策を取り下げ、SBIの軍門に下った。新生銀行は約3500億円に上る公的資金の返済が終わっておらず、SBIの主導でその道筋をどう付けるのか注目される。

SBIはかねて新生銀行の20%強の株式を持つ筆頭株主。9月初めに、TOBを通じて保有比率を最大48%に引き上げ、連結子会社化することを発表した。SBIが進める「第4のメガバンク構想」の中核として新生銀行を取り込むことを狙った。

新生銀行はTOBに条件付きで「反対」の意見を表明した。SBIが買付価格を引き上げることを賛成の条件としたが、SBIがこれを一蹴し、敵対的TOBに発展。新生銀行は11月末に買収防衛策発動の賛否を諮る臨時株主総会を開く手はずだった。ところが、約20%の株式を持つ大株主の国が防衛策発動に反対する見込みとなり、株主総会を開催前日に中止し、TOBへの意見も「中立」に変更するドタバタ劇を演じた。

オーケー、関西スーパーの争奪戦に敗れる

2021年の小売業界では前年に続いて「争奪戦」が勃発した。関西スーパーとエイチ・ツー・オーリテイリング(H2O)傘下のスーパー2社(イズミヤ、阪急オアシス)との経営統合に対し、首都圏を地盤とするディスカウントスーパーのオーケー(横浜市)が待ったをかけたのだ。オーケーは関西スーパーの7%超の株式を持つ第3位の大株主で、かねて同社に秋波を送っていた。

最終的な決着は最高裁にもつれ込んだ。統合手続き差し止めの仮処分を求めたオーケーの訴えが退けられたことで、H2O傘下の2社と関西スーパー(2022年2月に関西フードマーケットに社名を変更)の統合が実現する運びとなった。この一件では関西スーパーが10月末に開いた臨時株主総会で統合案を僅差で可決した際の「白票」の扱いが争点となった。

オーケーは関西進出を悲願とする。自力進出か、それとも新たな買収の道を模索するのか、次の一手が注目される。

東京機械株の買い占め問題も最高裁に

新聞輪転機大手、東京機械製作所の株買い占め問題も最高裁に舞台を移した。東京機械が打ち出した買収防衛策について、東証2部上場で投資会社のアジア開発キャピタルが差し止めを求める仮処分を申し立てたが、こちらも退けられた。

アジア開発の傘下企業が東京機械株の8%余りを新規保有し、筆頭株主に躍り出たのが判明したのは7月。同月末には保有比率が30%を超え、その後、約40%まで高めた。証券取引所で行われる市場内取引で株式を買い集めたのだ。通常、株式を大量かつ急速に買い集める場合、TOBが行われる。ただ、TOBは市場外取引を前提としており、今回のケースのような市場内取引はいわば盲点といえ、TOB規制のあり方に課題を残した。

買い占めに出たアジア開発は日本橋倉庫を前身とし、現在、香港を拠点とする企業グループのサンフンカイの傘下にある。一方、ターゲットになった東京機械は1906年に国産初の新聞輪転機を開発した名門で、国内の主要新聞社を顧客とする。ただ、紙離れで新聞各社の経営が厳しさを増す中、東京機械の業績も停滞感が広がっている。

文:M&A Online編集部