下水で新型コロナ「変異株」の発生動向を把握「塩野義」がサービスを開始

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下水処理場(写真はイメージです)

塩野義製薬<4507>は、下水中に含まれる新型コロナウイルスの濃度を定期的に測定することで、対象地域での新型コロナウイルスの感染状況や変異株の発生動向などの早期検知が可能となる調査サービスを始めた。

新型コロナワクチンの接種が広がり、感染症の収束が見込まれるが、ワクチンの効きにくい変異株の拡大や新たな変異株の発生などが危惧されている。

同サービスを活用すれば変異株の発生動向などを検知できるため、適切な感染拡大防止策を早期に講じることができそううだ。

新型コロナの定量的検出が可能

新型コロナウイルス感染者の糞便中には、発症の前段階からウイルスが存在する可能性が指摘されており、米国やオランダでは、施設や都市の下水に含まれる新型コロナウイルスを定期的にモニタリング(観察)することで、流行状況の早期検知や収束判断などを行っている。

日本では米国や欧州などと比べ、新型コロナウイルス感染者数が少なく、下水中の新型コロナウイルスの濃度が低いため、感度の高い検出技術が必要だった。

塩野義製薬は、北海道大学と2020年10月に共同研究を始め、下水中の新型コロナウイルスの高感度検出技術の開発に成功した。

同検出技術を用いて2021年4月からは、大阪府の下水処理場で新型コロナウイルスのモニタリングに取り組んでおり、新型コロナウイルスの定量的検出が可能であることを確認したという。

自治体の下水処理場で定期的に下水を採取しモニタリングすれば、個人が特定されない形で対象地域での新型コロナウイルスの感染拡大や収束の傾向を把握できるため、対策を講じる際の一つ客観的な指標として活用できそうだ。

島津製作所と提携し社会システムを構築

塩野義製薬は2021年6月2日に島津製作所<7701>と、新型コロナウイルス感染症の下水モニタリングの早期社会実装を目指した業務提携に基本合意した。

両社は下水中のウイルスの自動検出や、感染状況や変異株の発生動向などの検知が可能となる下水モニタリングの社会システム構築を目指す。

また、塩野義は6月11日に、北海道大学と共同研究した「下水中の新型コロナウイルスを含むすべてのウイルスおよび細菌の高感度検出技術」に関する独占的ライセンス契約を結び、独占的実施権を取得している。

新型コロナウイルスの変異株が早期に検出できるようになれば、早期の変異株用ワクチン開発なども期待できそうだ。

文:M&A Online編集部