シダックスの業績がV字回復、今後を左右するオイシックスとの協業体制はどうなる?

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シダックス<4837>の業績回復が鮮明になりました。

2023年3月期の売上高は前期比4.9%増の1,212億2,000万円、経常利益は同82.7%増の41億8,800万円となりました。2024年3月期は2.3%の増収、5.1%経常増益を予想しています。

同社は2016年3月期から3期連続の経常損失を計上するなど、業績が低迷していました。2019年に投資ファンド、ユニゾン・キャピタル(東京都千代田区)の支援を受けて不採算事業の整理などを行いました。

再建のめどがついた2022年、ユニゾン・キャピタルの持株をオイシックス・ラ・大地<3182>に売却する際、役員の一部がそれに反対するなど、経営は一時混乱しました。最終的にオイシックスのTOB株式公開買い付け)は成立し、次の成長ステージへと移ったように見えます。しかし、水面下では不協和音も響いています。

この記事では以下の情報が得られます。

・シダックスの業績推移
・業績回復の軌跡

カラオケ事業の売却損で一時経営危機に

決算短信より

シダックスは2019年5月にユニゾン・キャピタルと資本業務提携を行いました。40億円のB種優先株と25億円のC種優先株を発行し、65億円を調達するというもの。ユニゾン・キャピタルの代表取締役パートナーの川﨑達生氏が、シダックスの取締役として経営に参画し、ハンズオン型の経営支援を行いました。

ユニゾン出資後のシダックスは、目覚ましい業績回復を果たします。

シダックスは2018年に、「カラオケ館」を運営するB&V(東京都練馬区)にカラオケ事業を売却しました。その際に43億円もの売却損を計上します。カラオケ事業による赤字が続いていたこともあり、シダックスの自己資本比率は28%から10%程度まで低下しました。

同年に日本政策投資銀行(東京都千代田区)に対して優先株を発行して25億円を調達するものの、2019年3月末時点で自己資本比率は12.3%と、依然として綱渡り状態が続いていました。

ユニゾンが出資した後の2020年3月末は自己資本比率が18.7%まで回復。更に三井住友銀行(東京都千代田区)をアレンジャーとする160億円のシンジケートローン契約を締結し、借入金をすべて返済。財務状態の健全化を図りました。

成長への下準備を整えた後で、コンビニ中食事業の売却など、不採算事業の整理を進めました。主力の給食事業に経営資源を集中したのです。

2021年3月期は8億9,300万円の経常利益(前年同期は1億2,700万円の経常損失)を出しました。経常利益率は0.8%。シダックスは年々利益率を高めており、2023年3月期は3.5%となりました。

主力のフードサービス事業は伸び悩みが鮮明に?

ユニゾン・キャピタルは再建を果たした2022年に、持株の売却を計画します。その相手がオイシックスでした。ユニゾンのB種優先株は普通株への転換権があり、転換すると保有比率が28%超となります。

オイシックスが取得しようとしたのは、ユニゾンの持株分のみでした。株式の1/3を超える場合はTOBの実施が義務付けられていますが、オイシックスの取得は基準値を超えるものではありませんでした。

しかし、ユニゾンはTOBによる取得を求めました。別の候補者が現れ、株価が上昇することに期待したものと考えられます。

このTOBが経営陣を混乱させる引き金となりました。当時の取締役3名が、このTOBは創業家とオイシックスが勝手に進めたものだと反発したのです。給食事業の協業先がオイシックスに限定され、本来得られるはずの利益を失う可能性があることを危惧したものでした。

しかし、懸念材料は他にもありました。

オイシックスはかつてシダックスから出資を受けるなど、親密な関係にありました。志太家の持株とオイシックスを合わせると、保有比率は6割を超えることになります。仮にオイシックスが志田氏に対する恩義があって、頭が上がらない関係なのであれば、志田氏の支配力が強まります。反対した当時の取締役は、シダックスの定時株主総会における議決権の行使率は7割程度であり、2/3の賛成が必要な特別決議を成立させることができると警戒感を露わにしました。

最終的には公平に検討することで合意が得られ、TOBは成立します。業績も回復し、一連の混乱は終結したように見えます。

ただし、死角がないわけではありません。

2023年3月期において、V字回復に寄与しているのは車両運行サービスと社会サービス。両事業はコロナ禍による需要回復で増収増益となりました。

主力のフードサービスの売上高は前期比0.9%減の519億7,600万円、営業利益は同13.9%減の22億7,600万円でした。減収減益となったのです。

シダックスはオイシックスとの協業により、オイシックスが得意とするミールキットを活用して取引先となる保育施設の拡大などを計画していました。しかし、TOBで生じた軋轢により、協業体制は保留状態。2023年内に協業内容、事業戦略を発表するとしています。その内容が、今のシダックスの命運を握っていると言えます。

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