「サーチファンド元年」活動が活発化 中小企業の事業承継にも一役

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2022年はサーチファンド(個人が投資家からの資金援助を受けM&Aによって経営者になる仕組み)の活動が本格化した「サーチファンド元年」と言ってよさそうだ。

2020年にサーチャー(M&A先を探している個人)が経営者になるケースがあったものの、その後は静かな状態が続いていた。それが、2022年に2人の経営者が誕生したほか、15人のサーチャーが活動を開始した。

背景には、中小企業の後継者不在問題がある。中小企業の事業承継は日本経済にとって大きな課題となっており、この課題解決の一つの方法として、サーチファンドへの関心が高まっているのだ。

サーチャー予備軍も控えており、今後、経営者になるサーチャーが増えそうだ。

2人の経営者が誕生

2022年は、大屋貴史氏がリフォーム事業を手がけるミスターデイク(山梨県甲府市)の社長に、西澤泰夫氏が職域向け総合決済システムを手がけるエヌ・エス・システム(東京都中央区)の社長にそれぞれ就任した。

大屋氏は東京大学卒業後、博報堂などを経て、2021年からサーチファンド・ジャパン(東京都千代田区)の支援を得てサーチャーとして活動していた。西澤氏も東京大学卒業後、三井物産を経て、グロウシックスキャピタル(東京都中央区)が支援するサーチャーとなった。

このほかに野村リサーチ・アンド・アドバイザリー(東京都千代田区)などが関わるジャパン・サーチファンド・プラットフォーム投資事業有限責任組合が支援する松本竜馬氏や、グロウシックスキャピタルが支援する伊藤啓太氏や冨田智寛氏ら15人がM&A 先を探索している。

現在、日本には主に、2019年にスタートした山口フィナンシャルグループなどが関わるYMFG Search Fundと、グロウシックスキャピタルなどが関わるファンド、2020年にスタートした日本政策投資銀行などが関わるファンド、2021年にスタートしたジャパン・サーチファンド・プラットフォームの、四つのサーチファンドがある。

MBA(経営学修士)の取得者に対象を絞るファンドや、M&A仲介業者を活用するファンド、現職のままサーチャーとして活動できるファンドなど、それぞれに特徴がある。

後継者不在が深刻化

中小企業庁によると、経営者の年齢のピークは、この20年間で50代から60~70代に上昇しており、後継者の不在状況が深刻化し、このままでは雇用や技術が失われる可能性があるとしている。

また、同庁では事業承継による世代交代やM&Aによる規模拡大は、企業の成長に効果的とし、事業承継に取り組む中小企業を後押しする姿勢を強めている。

サーチャーの増加はもちろん、新たなサーチファンド誕生の可能性も高そうだ。

文:M&A Online編集部