【業界最前線ブログ】「ファッション流通の現場」(6)世界アパレル専門店売上ランキング2015 トップ10

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世界アパレル専門店売上ランキング2015 トップ10

 世界の大手アパレル専門店各社の2015年の売上高や利益などをまとめる機会ができましたので、毎年恒例になりました売上高のランキングTOP10を共有させていただきます。

 円建て比較にあたり、為替レートは2016年1月末の€=131.2円、スウェーデンクローナ=14.1円、US$=121円、英国£=172.4円で換算しています。

 尚、6位のC&Aのみ2015決算が入手できませんでしたのでDeloitte Global Powers of Retailing2016と2015を参考にした2014年度の売上高を表示しています。

ランキング 売上高 前年比 営業
利益率
期末
店舗数
基幹業態
とシェア
1位-Inditex
(西インディテックス;16.01期)
2兆7,420億円 +15% 17.6% 7,013 ZARA 65%
2位-H&M
(瑞エイチアンドエム;5.11期)
2兆5,501億円 +19% 14.9% 3,924 H&M 95%超
3位-Gap
(米ギヤップ;16.01期)
1兆9,114億円 -4% 9.6% 3,721 Old Navy 42%
Gap 36%
4位-Fast Retailing
(日ファーストリテイリング;15.08期)
1兆6,817億円 +22% 9.8% 2,978 Uniqlo 82%
5位- L Brands
(米エルブランズ=リミテッド;16.01期)
1兆4,706億円 6% 18% 2,978 Victoria's Secret 63%
6位-C&A Europe
(独シーアンドエー;14年度)
1兆1,125億円 -6% n/a 1,575 C&A 100%
7位-Primark
(愛プライマーク;15.09期)
9,218億円 +8% 12.6% 293 Primark 100%
8位-Next
(英ネクスト;16.01期)
7,152億円 3% 20.5% 540 NEXT 97%
9位-Ascena retail
(米アセナ;15.7期)
5,811億円 0% -4.9% 3,895 Justice 27%
LaneBryant 23%
10位-Shimamura
(日しまむら;16.2期)
5,460億円 7% 7.3% 2,015 しまむら 81%

 備考-米TJMaxx、Rossのオフプライスストア2社は売上規模はトップ10に入る規模ですが、メーカーや専門店が放出した過剰在庫を販売する二次流通マーケットのため除外しました。また、中国で拡大を続け、売上規模では9位あたりに位置すると目されるE.LandWorld(韓国)は売上規模以外の実態が掴めないため除外しました。

 以下 解説です。

 1位のインディテックスグループは基幹ブランドZARAほか8ブランドを中心に中国、メキシコ、ロシアなどの新興国を中心に分散出店を行い、グローバルレベルの既存店も8.5%増と好調で二桁の増収増益を果しました。

 2位のH&Mは19%の増収も5%の微増益に終わりました。同社は当期もアメリカ、中国への集中出店で引き続き売上の大幅拡大を果しましたが、利益が伸びなかった要因としては、商品調達をドル建てで行っていることによる商品コストの増加、世界的な温暖な気温にともなう秋ものの値下げ増による粗利率の低下を挙げています。

 3位のGAPは米国内の不採算店舗の大量整理により減収減益。既存店もマイナス4%とまだトンネルの出口が見えないですね。今期はアメリカのリストラを進め、日本のOLD NAVYを全店閉鎖し、中国に集中すると言いますが、果たしてどうなるでしょうか・・・

 一方、4位のファーストリテイリングは国内ユニクロ事業の堅調に加え、海外ユニクロ事業の中でも中国事業の好調、グローバルブランド事業の中のジーユーの好調が加わり増収増益に寄与。

 次年度のランキングでは同社がリストラが続くGAPを抜いて3位に浮上する可能性も高いです。

 5位のLブランズは基幹ブランドであるヴィクトリアズシークレットを中心に店舗の大型化と既存店の5%増収で好業績を維持。

 6位以下では、二桁の増収増益を続けていたプライマークの減速(前期までは前年比二桁増収)、

 EC(ダイレクトビジネス)の構成比が上がって(同期NEXTブランドにおける売上高構成比41%、営業利益構成比50%)、収益率が高まるネクストが特筆されますね。

 プライマークは昨年の夏にロンドンで視察をしましたが、バングラデシュでの悲劇の反省を受けてか、原産国をルーマニアやベトナムにシフトしていたのが印象的でした。

 今回のランキングでは、高い営業利益率を上げているインディテックス、Lブランズ、ネクストの3社とそれ以外の企業に明暗が分かれた結果になったように思います。

 ドル建てでアジアを中心に商品調達をするH&M、GAP、ファーストリテイリング、プライマークなどは今後も商品原価の高騰や為替変動のリスクや主要マーケットでの天候の影響を免れることはないでしょう。

 これに対して、インディテックスは原価が高くても本社近くスペイン近隣で小ロット短サイクルで商品を調達して在庫リスクを軽減しながら値下を抑える手法に磨きをかけています。また、88か国に出店するグローバルビジネスであることは、為替リスクの分散にもつながります。

 Lブランズはアメリカがファストファッションの洗礼を受け続ける約10年前に、アパレル(外衣)よりもインナーウエアやヘルスアンドボディケアといったビューティ部門に事業ドメインを切り替えて以来、アメリカ市場でのひとり勝ちが続きます。

 ネクストは実店舗の出店よりもカタログおよびインターネットによる通販比率を高めて(41%)、高い営業利益率を維持しています。

 ◎ 商品原価を下げるより在庫コントロールによって適正価格の実現
 ◎ アパレル一辺倒からビューティ部門の強化
 ◎ ECビジネスの拡大

 この3つがポストファストファッション時代のグロ―バルビジネスの成功のカギと言えそうです。

文:齊藤孝浩 【ファッション流通ブログde業界関心事】 2016年6月最新記事より転載