【道路業界】上位3社に再編の波、日本道路は清水建設の子会社に

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日本道路の本社(東京・新橋)

道路舗装業界に再編の波が押し寄せている。業界3位の日本道路が名実ともに清水建設の傘下に入ることになった。清水建設はTOB(株式公開買い付け)を通じて持ち株比率を高め、これまで関連会社だった日本道路を子会社化する。最大手のNIPPO、2位の前田道路は昨年来、上場廃止に動いている。

清水建設、系列の日本道路を子会社化

清水建設は2月10日に日本道路に対するTOBを開始した(3月22日まで)。現在24.8%の持ち株比率を50.1%に引き上げることを目指しており、買付代金は約222億円。株式の過半を取得して日本道路を清水建設グループの一員として明確化するのが狙いだ。

日本道路株の買付価格は1株につき1万円。市場価格は9700円前後で推移していることから、TOB成立が有力視される。

日本道路の前身は1929(昭和4)年に発足した日本ビチュマルス鋪装工業。清水建設は1954年に増資引き受けで日本道路株式の約25%を取得して以来、持ち株比率をほとんど変えず、関連会社として扱ってきた。

そこから一転、子会社化に踏み切るのは道路舗装業界が置かれた厳しい経営環境がある。国・地方の公共工事で道路事業費の減少傾向が続いているうえ、足元では原油高によるアスファルト合材・乳剤を中心とする原材料コストの上昇が収益を圧迫している。

このため、道路舗装各社として民間工事の受注拡大や周辺事業、海外事業への展開を推し進めるには、ゼネコン(総合建設会社)との連携促進が不可欠というわけだ。

道路舗装業界は大手8社体制が確立している。売上高4000億円を超えるNIPPO(旧日本鋪道)を筆頭に、前田道路、日本道路、鹿島道路、大成ロテック、東亜道路工業、大林道路、世紀東急工業が続くが、NIPPO、東亜道路工業を除く6社はゼネコン系列。しかも、鹿島道路は鹿島、大成ロテックは大成建設、大林道路は大林組の完全子会社だ。

前田道路、NIPPOは上場廃止へ

こうした中、業界上位3社をめぐる動きが一両年にわかに活発化している。先べんをつけたのは前田道路。2021年10月、親会社の前田建設工業と傘下の前田道路、前田製作所の上場3社が共同持ち株会社「インフロニア・ホールディングス」を設立し、経営統合した。3社の上場廃止に伴い、インフロニアが東証1部に新規上場した。

統合目的はグループ一体による「総合インフラサービス企業」の早期実現。ただ、事がすんなり運んだわけではなかった。統合の前段階として、前田建設が約24%を保有する前田道路の持ち株比率を50%超に引き上げて子会社化したのは2020年3月。しかし、前田道路が反発し、敵対的TOBに発展し、力ずくで子会社化した経緯がある。

業界最大手のNIPPOをめぐっては親会社のENEOSホールディングスと米ゴールドマン・サックス(GS)によるTOBが昨年末に成立。ENEOSは引き続きNIPPOを連結子会社として維持するものの、NIPPOは一連の手続きを経て3月29日付で東証1部上場にピリオドを打つ。

NIPPOはGSの主導で海外事業、不動産開発事業を中心に成長戦略に取り組み、将来の再上場を期す構えだ。

大手8社中、唯一独立系の東亜道路

今後注目されるのは世紀東急建設の動向。現在は東急建設が株式約22%を保有し、関連会社としているが、今回の清水建設・日本道路のケースと同様に子会社化に踏み込む可能性があり得る。

こうした中、東亜道路工業は唯一、独立系の立場を堅持する。1930年に日本ビチュマルスとしてスタートした日米合弁会社を起源とする。1970年から東証1部に上場する。同社は一般の道路建設のほか、テニスコート、サッカー、競輪場など球技・スポーツ施設の着色鋪装に強みを持つことで知られている。

文:M&A Online編集部