道路舗装業界のM&A、大手勢から中堅・中小クラスにも波及

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写真はイメージです(東京都内)

道路舗装業界のM&Aがここへきて中堅・中小クラスに波及している。戸田建設が2月末に系列の戸田道路(東京都中央区)を完全子会社化したのに続き、佐藤渡辺は3月31日にあすなろ道路(札幌市)を傘下に収める。

業界内ではコロナ禍以降、最大手のNIPPO、2位の前田道路がグループ内再編に伴い、相次いで株式を非公開化。3位の日本道路をめぐっては清水建設が持ち株比率を引き上げ、子会社化に踏み切るなど、地殻変動の様相を呈している。

佐藤渡辺、北海道で事業拡大へ

佐藤渡辺が31日付で子会社化するあすなろ道路は1973年に設立し、前身は小松舗道。中堅ゼネコン(総合建設会社)の高松コンストラクショングループ傘下にある青木あすなろ建設(東京都千代田区)から全株式を取得する。北海道エリアでの事業拡大につなげるのが狙いだ。

あすなろ道路は小松建設工業(現青木あすなろ建設)の北海道支店の道路舗装部門が独立して発足した経緯から、北海道を地盤とする。2022年3月期業績は売上高18億3400万円、営業利益1億7500万円。

あすなろ道路をグループに迎える佐藤渡辺は道路舗装業界の中堅に位置し、2005年に渡辺組と佐藤道路が合併して発足した。

2月末には準大手ゼネコンの戸田建設が戸田道路を完全子会社化した。85%余りの株式を保有していたが、残る株式を株式交換で取得した。戸田道路の業績(2022年3月期)は売上高70億6600万円、営業利益3億3700万円。一体性を強化し、グループ経営の機動性を高めるとしている。

ゼネコン、系列企業と連携強化

道路舗装各社は国・地方の公共工事で道路事業費の減少が続き、厳しい競争環境が常態化している。さらに足元では原油高で鋪装材料のアスファルト合材・乳剤を中心に原材料コストの上昇が加わり、収益を圧迫している。

その一方で、防災・減災の強化を目的とする「国土強靭化計画」を受け、道路施設の老朽化対策などの需要が比較的堅調で、ゼネコンを中心に系列に道路舗装会社との連携を強化する流れにある。

道路舗装業界は大手8社がトップグループを形成している。売上高が4000億円を超えるNIPPOを筆頭とし、前田道路、日本道路、鹿島道路、大成ロテック、東亜道路工業、大林道路、世紀東急工業が続く。NIPPO、東亜道路工業を除く6社はいずれもゼネコン系列だ。

NIPPOなど3社 立ち位置が一変

なかでも上位3社をめぐっては2020年を境に再編の動きがにわかに活発化し、各社の立ち位置が様変わりした。

その年の3月、前田建設工業が持ち分法適用関連会社の前田道路を敵対的TOB(株式公開買い付け)の末に子会社化。翌2021年10月、前田建設を中核とする共同持ち株会社「インフロニア・ホールディングス」の発足に伴い、前田道路は上場廃止となった。

業界トップのNIPPOは親会社のENEOSホールディングスが実施したTOBによって2022年3月末に上場廃止となった。ENEOSは親子上場を解消し、株式売却で得た資金を脱炭素などの成長投資に充てることを目的とした。

一方、3位の日本道路は名実ともに清水建設の傘下に入った。清水建設はTOBで持ち株比率をほぼ倍の50%超に引き上げ、日本道路を子会社化(上場は維持)した。

大手8社のうち、鹿島道路は鹿島、大成ロテックは大成建設、大林道路は大林組の完全子会社化となって久しい。今後は、東急建設系列である世紀東急工業、独立系の東亜道路工業の動静が注目される。

◎道路舗装業界の主なM&A

2005年 渡辺組と佐藤道路が合併し、佐藤渡辺が発足
2007年 前田道路、冨士土木を完全子会社化
2009年 大成建設、大成ロテックを完全子会社化
2010年 鹿島、鹿島道路を完全子会社化
2016年 コムシスホールディングス、東京鋪装工業を子会社化
2017年 大林組、大林道路を完全子会社化
2020年 前田建設工業、前田道路を子会社化
2021年 前田道路、上場廃止(前田建設工業、前田工業と経営統合)
2022年 NIPPOが上場廃止
清水建設、日本道路を子会社化
2023年 (2月)戸田建設、戸田道路を完全子会社化
(3月)佐藤渡辺、あすなろ道路を完全子会社化

文:M&A Online編集部