【RIZAPグループ】M&Aをいったん封印、再開はいつ

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(東京・神楽坂)

RIZAPグループ<2928>が新規M&A(合併・買収)の凍結を表明した。その理由は2019年3月期の業績が赤字に転落する見通しになったこと。M&Aに次ぐM&Aで業容を急拡大してきた同社だが、傘下に収めた一部の企業で経営改善が遅れていることが足を引っ張る形だ。では、これまでどんな会社を買収してきたのだろうか。

良くも悪くもM&Aが業績に直結

RIZAPグループは2019年3月期の営業損益予想を従来の230億円の黒字から33億円の赤字(前年同期は135億円の黒字)に下方修正した。売上高も今回、2500億円の予想から2309億円に下方修正したが、それでも前期実績の1362億円から1年で1000億円近く増える見通しだ。良くも悪くも、M&A後の結果が業績に直結する構図といえる。

グループ会社数は9月末時点で85社。2016年3月期末は23社だったので、2年半で52社増加した。その大部分はM&Aで傘下に収めた企業だ。ちなみに2016年3月期当時の売上高は539億円、営業利益は31億円だった。

赤字転落の見通しを受け、打ち出したのが新規M&Aの原則凍結と既存事業の選択と集中だ。同社の代名詞で、「結果にコミットする」のキャッチフレーズで抜群の知名度を持つフィットネスジム「RIZAP」事業は好調が続いているが、これ以外の事業については投資回収や収益改善が難しかったり、当初想定していたグループ内シナジー(相乗効果)が見込めなかったりする場合、縮小・撤退・売却を進める。

傘下に9つの上場子会社を配する

RIZAPグループは美容・健康関連、アパレル関連、住関連ライフスタイル、エンターテイメントの4つを事業ドメインとする。買収した上場子会社だけで9社を配置している(表を参照)。

美容・健康関連の中核企業は2~3カ月のパーソナルトレーニングで大幅な体重減と体型改善を目指すフィットネスジム展開のRIZAP。M&Aで加わった子会社として体型補正下着のMRKホールディングス<9980>、ヘルスケア・ボディケア用品のジャパンゲートウェイ、フリーペーパーのぱど<4833>、同じくフリーペーパーのサンケイリビング新聞社など多彩な顔ぶれが並ぶ。

アパレル関連は婦人服の夢展望<3185>、カジュアルウエアのジーンズメイト<7448>、洋装・和装の堀田丸正<8105>などが軸。住関連ライフスタイルではインテリア雑貨・旅行用品のイデアインターナショナル<3140>、インテリア・生活雑貨のHAPiNS<7577>、注文住宅やリフォームのタツミプランニング、ゲームソフトのワンダーコーポレーション<3344>などがある。

エンターテイメントでは、映画館やボウリング経営のSDエンターテイメント<4650>、コミック系出版社の日本文芸社が主力となっている。

これらのうちグループ入り1年未満の子会社を中心に赤字幅が拡大した結果、今回、業績を大きく下押しすることになった。

〇買収した上場企業の一覧

社名 直近売上高
2013 イデアインターナショナル 90億円
2014 SDエンターテイメント 79億円
2015 夢展望 50億円
2016 HAPiNS 87億円
MRKホールディングス 149億円
2017 ジーンズメイト 97億円
ぱど 71億円
堀田丸正 77億円
2018 ワンダーコーポレーション 731億円

「結果にコミット」をいかに体現するか?

RIZAPグループによると、上場子会社の損失見込額は44億円。その内訳はワンダーコーポレーション(32億円)、ぱど(5.9億円)、MRKホールディング(同5.8億円)。また、非上場企業の損失ではジャパンゲートウェイ20億円、タツミプランニング5億円、サンケイリビング新聞社5.2億円などとなっている。

買収する企業は経営が低迷しているところが多い。買収後2~3年での再建を基本としているが、経営改善が当初予定通りに進んでいないことが今期の赤字転落の主因となったのだ。配当もゼロとする。

RIZAPグループは2003年に健康食品の通信販売を目的とする「健康コーポレーション」を東京都内で設立したことに始まる。M&Aには当初から積極的で、2006年の株式上場を機に勢いを増した。実は上場したのは意外にも札幌証券取引所で、これは現在まで変わっていない。上場企業に対する買収は2013年以降本格化している。2016年、純粋持ち株会社への移行に伴い、現在のRIZAPグループに社名を変更した。

創業者の瀬戸健社長は役員報酬を返上する。そのメドは営業利益が230億円(今期の当初予想)を達成するまでという。M&Aの封印を解くのはいつなのか。V字回復に向けて、経営トップが文字通り、「結果にコミット」を体現することが求められる。

文:M&A Online編集部