【リゾートトラスト】M&Aによってメディカル・シニアライフ事業の強化を図り始める

alt
画像はイメージです。

日本のリゾート会員権のシェアトップを走り続ける

 「リゾート」とは「多様な余暇活動を楽しめる場」と定義されることが多いが、リゾートトラスト<4681>はまさに「リゾート」の充実を目的とした総合リゾート事業を営んでいる。

 リゾートトラストは、1973年に名古屋市中区に設立され、事業は大きく2つに分類される。会員制リゾート事業(会員権事業、ホテルレストラン事業、ゴルフ事業)とメディカル・シニアライフ事業(メディカル事業)の2つである。会員制リゾート事業は文字通りリゾートに関する事業を営んでおり、日本におけるリゾート会員権のシェア7割を超え、トップを走り続けている。

 一方、メディカル・シニアライフ事業は、会員の高齢化とともにに高まる「健康で長生き」を求める声に対し、「リゾート地でリラックスしながら受けられ、痛みのほとんどない」新しい形の検診をコンセプトに、リゾート施設とホスピタリティを生かした事業として誕生した。メディカル事業では、がん治療・シニア医療・プライマリーケア等の医療サービスを提供しており、シニアライフ事業では、既存の事業で培ったホスピタリティによる介護付き有料老人ホームを運営している。

■リゾートトラストの行った主なM&A

年月 主なM&A
1998.6 ゴルフ事業への参入を目的として多治見クラシックを子会社化
1998.7 ゴルフ事業の強化を図るため、ジャパンクラシック、岡崎クラシック、オークモントゴルフクラブを子会社化
1999.12 リゾートトラスト初島を買収、初島クラブの再建を支援
1999.12 リゾートトラスト鳴門を子会社化
2001.3 ユーエス・サクマおよびユーエス・トレイディングを子会社化
2002.10 第一アドシステムを子会社化
2003.3 リゾートトラスト那須白河およびアール・ティー開発那須白河を子会社化
2006.7 医療施設経営コンサルティングを行うアドバンスト・メディカル・ケアを子会社化
2006.9 介護付有料老人ホームを運営する「こころから」を子会社化
2007.2 ゴルフ場を運営するエス・アイ・アールの全株式を取得
2007.5 医療施設経営コンサルティングを行うCICSを第三者割当による募集株式全部を引き受けにより子会社化
2009.1 高級有料老人ホームを運営するヒューマンライフサービスを買収
2010.6 高級有料老人ホームを運営するボンセジュールグラン(売上高26億円)の全株式を取得
2011.9 関西ゴルフクラブを運営する三明の全株式を取得
2012.11 介護付有料老人ホームを運営するサンビナス宝塚の経営権を取得
2013.5 サービス付高齢者向け住宅および介護付老人ホームを経営するアンクラージュの経営権を取得
2014.12 アメリカハワイ州「ザ・カハラ・ホテル&リゾート」を313億円で買収

会員権事業の不安定さをメディカル事業で補う

 リゾートトラストは、持続的成長のため積極的な投資を行っており、その一環としてM&Aも積極的に行っている。特に新規事業への参入や海外展開の際にM&Aを活用している。直近では、メディカル・シニアライフ事業への強化を図っており、M&Aの割合が高い。

 売上、利益ともに09年3月期と12年3月期に落ち込んでいる。09年3月期はリーマンショック(08年9月~)、12年3月期は東日本大震災(11年3月~)による影響である。セグメント別の売り上げに分解すると以下のグラフの通りである。なお、15年3月期よりセグメント区分が変更され、ゴルフ事業を会員権事業とホテルレストラン事業に割り振られている。これにより、セグメント区分は「会員権事業」「ホテルレストラン事業」「メディカル事業」「その他」の4区分となっている。


  売り上げが大幅に減少している09年3月期および12年3月期はどちらも会員権事業の売り上げが大幅に減少している。会員権の販売が不況による個人消費の低迷の影響を受けたことが要因である。しかし10年、11年には売り上げが大幅に増加している。これは、10年3月に高級会員制リゾートホテル「エクシブ」シリーズのエクシブ箱根離宮(187部屋)、11年3月にエクシブ有馬離宮(175部屋)が開業したことが要因である。なお、12年3月にもエクシブ軽井沢サンクチュアリ・ヴィラ・ムセオとエクシブ軽井沢パセオが開業しているが、それぞれ16部屋、32部屋と部屋数が少ないため11年に比べ売り上げが減少している。

 リーマンショックや東日本大震災によりリゾート施設の開発計画の見直しや設計変更等が行われたことで13年以降エクシブシリーズは開業していないが、14年1月にエクシブ鳥羽別邸の会員権の販売開始、14年10月にエクシブ湯河原離宮の会員権の販売開始により、14年は13年に比べ売り上げが増加し、16年3月のエクシブ鳥羽別邸開業予定に伴い16年は売り上げが大幅に増加の見込みである。 

 ここで、会員権事業の売上計上方法を簡単に説明すると、会員権はリゾートホテル開業前に販売され、会員権販売時に会員権の10%は保証金として負債計上、40%は売上計上され、残り50%はリゾートホテル開業時に一括で売上計上される。よって、会員権販売時とリゾートホテル開業時に売上が大きく計上されることとなる。

 このように会員権事業はリゾートホテルの開業の有無または会員権販売開始の有無により売上が大きく変動することになる。この会員権事業の不安定さを補完するため、リゾートトラストはメディカル事業の強化を図っている。メディカル事業の売り上げは、09年が62億円に対し、14年は173億円と3倍弱の増加を示している。

 09年、10年に高級有料老人ホーム、12年には介護付有料老人ホーム、13年にはサービス付高齢者向け住宅及び介護付老人ホームを営む会社を子会社化している。メディカル事業の売り上げが全体に占める割合は、09年は7%であったが14年では15%と2倍以上になっている。会員権事業の売り上げが落ち込んだ13年においてもリゾートトラスト全体で見ると売り上げが増加しているのは、M&Aによりメディカル事業が躍進したことも1つの要因である。


 有利子負債は、09年が480億円に対し15年は1,200億円で2.5倍に増加している。一方、自己資本比率は09年が20.6%%に対し、15年は25.5%と20%以上の増加を示している。有利子負債の増加に関わらず自己資本比率が増加しているのは自己資本も大幅に増加しているのが要因である。自己資本は09年が500億円に対し15年はおよそ1,000億円と2倍に増加している。 

 リゾートトラストは、中期経営計画で記載の通り、持続的成長に必要な内部留保とのバランスを取りつつ新たな収益機会獲得のために積極的・機動的なM&Aなど成長投資を行っている。有利子負債の増加は成長投資に必要な資金の調達のためであり、成長投資に伴う利益の増加により内部留保も確保されバランスが良い経営が行われていることが上記グラフより読み取れる。

この記事は、企業の有価証券報告書などの開示資料、また新聞報道を基に、専門家の見解によってまとめたものです。

まとめ:M&A Online編集部