アパレル受難! 明日はわが身の「レナウン・ショック」

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レナウンの本社が入るビル(東京・有明)

アパレルの名門、レナウンが経営破綻に追い込まれた。30年近くに及ぶ長期低落に歯止めがかからず、危機的な状況にあったところに、新型コロナウイルスの感染拡大が決定打となった。かつて売上高トップを誇ったレナウンの凋落はアパレル各社にとって決して他人事ではない。

凋落の一途、上場アパレルの破綻は11年ぶり

現在、アパレルメーカーの2強はオンワードホールディングス(HD)とワールド。売上高は2400億円前後で拮抗する。レナウンはピークの1990年当時に、売上高2300億円を超えていたが、今やその4分の1ほどに過ぎない。

1974年にアパレル業界初の1000億円企業となったのもレナウンだったが、バブル崩壊後の1990年代からリストラに次ぐリストラを繰り返し、中堅のポジションに陥落。それでも縮小均衡点を見いだせず、今回の結末を迎えた。

レナウンは5月15日、東京地裁から民事再生手続きの開始決定を受けたと発表。負債総額は138億7900万円。上場企業の経営破綻は洋菓子製造のシーベル(ジャスダック、2019年1月に民事再生法の適用申請)以来1年4カ月ぶり。新型コロナ関連としては上場企業で第1号となる。

上場アパレルメーカーの破綻は2009年に自己破産した小杉産業(東証2部、現コスギ)以来11年ぶり。小杉産業といえば、ジャック・ニクラウスのゴルフウエア「ゴールデンベア」で一世を風靡したことで有名だ。レナウンは整理銘柄入りし、6月16日に東証1部上場が廃止となる。

中国企業に代わるスポンサーを探す

民事再生手続きの決定を受け、レナウンは今後、管財人のもとで、スポンサーを探し、8月半ばまでに再生計画案を提出する。民事再生手続きは現経営陣が引き続き残るため、管財人は原則不要だが、今回は裁判所が管財人の選任を命じた形だ。

スポンサーといえば、そもそもレナウンには中国企業がついていたはず。中国繊維大手、山東如意科技集団有限公司の子会社となったのは2013年のこと。不採算事業の撤退・縮小を進めたが、売上高は一度も上向くことなく、出血(赤字)は止まらず。中国での店舗展開も進めたが、結局、頓挫した。

2019年12月期(10カ月変則決算)は売上高502億円、営業赤字79億円、最終赤字67億円。親会社の山東如意のグループ企業に対する約50億円の売掛金回収ができず、多額赤字を計上する羽目になったのだ。親会社とのぎくしゃくした関係が露呈し、かえって信用不安が増幅した。ここへ新型コロナが襲った。

店頭売上高の推移をみると、影響は明らかだ。1月、2月は前年比90%台だが、3月は57%、4月にいたっては出店先の百貨店、量販店の臨時休業などで19%まで激減し、資金ショートに陥った。親会社の山東如意はもはや救済の手を差し伸べようとしなかった。

上位各社もなお構造改革途上に

同業の上位各社も安泰とは言い難いのが実情だ。メーカー系アパレルはオンワードHD、ワールド、TSIホールディングス、三陽商会がレナウンを含めて上位を形成。主要販路としてきた百貨店、量販店で衣料品が売れなくなって久しいが、ビジネスモデルの転換は思うように進んでいない。むしろ業績が後退し、各社ともなお事業構造改革の途上と言わざるを得ない。

百貨店・量販店ルートが失速する一方、1990年代以降、郊外型SC(ショッピングセンター)、駅ビル、ファッションビルなどの新業態が台頭。2000年代に入ると、ユニクロ(ファーストリテイリング)、しまむら、ZARA、H&Mなど国内外の有力SPA(製造小売業)との競争が激化した。Eコマース(EC、電子商取引)の急拡大で実店舗の販売が一層細ったのは言うまでもない。

◎アパレルメーカー大手の直近業績(単位億円、カッコ内は増減率)

  売上高 最終利益 EC比率
オンワードHD 2482(3.2%増) 損失521(-) 13%
ワールド 2362(5.4%減) 80(12%減) 11%
TSI HD 1700(3.1%増) 21(-) 21%
レナウン 502(-) 損失67(-) 2.3%
三陽商会 688(-) 損失26(-) 13%

※レナウンは2019年12月期(10カ月変則決算)、ワールドは2020年3月期、残る3社は2020年2月期(ただし、三陽商会は14カ月変則決算

オンワードHD、今期も700店舗閉鎖へ

現在、業界トップのオンワードHDにしても、2007年2月期に売上高3186億円と過去最高を記録したが、2020年2月期は売上高2482億円にとどまり、500億円を超える巨額最終赤字に転落した。約700店舗の閉鎖や希望退職者募集(413人応募)などを実施したのが主な要因。

同社は2021年2月期も700店舗程度の閉鎖を計画し、リストラの手を緩める気配はない。Eコマースについては現在330億円の売上規模を今期中に500億円に拡大を目指す。

Eコマースは各社とも強化方針だが、売上高比率はTSIホールディングスが最も高く21%。オンワードHD、ワールド、三陽商会は10%強。レナウンはわずか2.3%(12億円弱)にとどまり、Eコマース対応で後手に回ったことが致命傷の一つになったことは明らかだ。

気を吐くワールド

業界3位のTSIホールディングスは2011年、東京スタイルとサンエー・インターナショナルが経営統合して発足した。統合10年の節目を迎えるが、収益力の点など課題を抱える。

三陽商会は2020年2月期まで4期連続の最終赤字。同社は2015年に英バーバリーとの国内ライセンス契約終了で経営が傾き、1000億円を超えていた売上高がほぼ半減した。業績立て直しに向け、今期は約150店舗の閉鎖を予定する。

唯一、気を吐いているのはワールドだ。MBO(経営陣による買収)で非公開化し、事業構造改革を行い、2018年に13年ぶりに再上場(東証1部)を果たした。最終利益は減益ながら80億円を確保し、上位陣で抜きんでている。再上場を機に国内外でのM&Aにも意欲的だ。

「コロナ」下、各社とも外出自粛が本格化した3月は4割程度、営業休止が広がった4月は7~8割の売上高減という異常事態に見舞われた。コロナ・ショックは業界に地殻変動をもたらす引き金となるのか。レナウン再建の行方とともに、要ウオッチだ。

文:M&A Online編集部