グループ会社内に赤字会社と黒字会社があり、グループ全体としては利益が出ていないというケースはよく見られると思います。黒字会社の法人税などを支払わなければならない一方、赤字会社の税金が戻ってくるという訳ではありません。もし、グループの損益を相殺できれば、法人税を抑えられますよね?

このような申告を可能にするのが「連結納税」の制度です。今回は、わかりやすく連結納税の概要とその魅力を紹介したいと思います。

連結納税はどのような制度なのか?

連結納税は、親会社がグループ各社の所得をまとめて法人税の申告や納税を行う制度です。「連結」と聞くと、連結決算や連結財務諸表を思い浮かべる方がいるかもしれません。しかし、連結納税はそのような財務書類の作成方法とは異なり、あくまで法人税の申告および納税の方法です。したがって、連結決算や連結財務諸表の作成を行っていない企業でも採用することが可能な制度です。

連結納税は大企業だけが採用できる制度ではなく、100%支配関係を有する親会社と子会社であれば、規模に関わりなく採用することができます。中小企業や少数企業グループでも活用を検討してみる価値のある制度といえます。

連結納税を利用すると何ができるのか?

連結納税を導入するもっとも主要なメリットは、グループ全体で法人税額を抑えることができる可能性があることです。

たとえば、親会社Aが200万円の黒字、子会社Bが300万円の赤字でグループ全体が100万円の赤字である場合を考えてみましょう。法人税率を20%と仮定すると、通常の法人税申告であれば、子会社Bには法人税が課されないものの、親会社Aには40万円(=200×20%)の法人税が課されます。

【通常の申告】

会社所得(万円)法人税(万円)
親会社A +200(黒字) 40(=200×20%)
子会社B △300(赤字) 0
グループ計 △ 100(赤字) 40(=40+0)

これに対して、連結納税であれば、親会社Aの黒字と子会社Bの赤字が合算された結果としての「連結所得」に対して法人税率が適用されます。連結所得がマイナス100となる当該ケースでは連結法人税がゼロということになります。つまり、通常の法人税申告では、グループ全体の法人税が40であったのに対して、連結納税ではグループ全体の法人税がゼロとなり、法人税額を抑えることができています。

【連結納税で申告する場合】

会社所得(万円)法人税(万円)
親会社A +200(黒字)
子会社B △300(赤字)
グループ計 △ 100(赤字) 0 ※連結法人税はゼロ

また、連結所得のマイナス100万円は、連結欠損金として将来の所得から控除することができます。連結納税開始後に生じた欠損金だけでなく、連結納税を開始する前から親会社が有していた欠損金もグループ全体の所得から控除することができます。

なお、通常の法人税申告と同様、連結納税においても資本金1億円超の大法人では連結所得から控除できる欠損金に制限があります。具体的には、平成29年4月1日から平成30年3月31日までに開始する連結事業年度では連結所得の55%、平成30年4月1日以降に開始する連結事業年度では連結所得の50%までしか控除できません。ただし、連結親法人が中小法人の場合には控除額の制限がありませんので、100%控除することができます。

連結納税で気をつける点とは?

このように連結納税はグループ全体の法人税を抑えるためには魅力的な制度ですが、導入にあたっては気を付けておかなければならない点がいくつかあります。

・子会社の繰越欠損金の切り捨て

連結納税でグループ全体の所得から控除できる欠損金は、連結納税を開始する前に親会社が有していた繰越欠損金と連結納税開始後に親会社や子会社で生じた連結欠損金に限られます。

つまり、連結納税を開始する前に子会社が有していた繰越欠損金は基本的に切り捨てとなります。一定の子会社については繰越欠損金を持ち込むことができますが、所得からの控除に際してはその子会社の所得を限度とするなどの制約があります。

通常の単体納税を続けていれば、将来の所得から控除できた子会社の繰越欠損金が、連結納税を導入したばかりに無駄になってしまうという事態も考えられます。連結納税の導入にあたって十分留意すべきところです。

・資産の時価評価

連結納税を開始する際や、すでに連結納税をしている場合で新たに子会社が加入する際には、子会社が有する一定の資産について時価評価が必要となります。一定の資産とは、固定資産、土地(土地の上に存する権利を含む)、有価証券、金銭債権、繰延資産を指します。

たとえば、子会社の土地に含み益がある場合、時価評価が行われると、連結納税開始前の子会社の最終事業年度において課税されることになります。法人税を抑える目的で連結納税を導入したのにもかかわらず、かえって課税が生じる可能性があるため留意が必要です。

・地方税の申告について

連結納税はあくまで法人税の申告にかかる制度です。法人住民税や法人事業税などの地方税についてはグループ各社が行う必要があります。また、条件によっては連結納税の影響で地方税が高くなるケースもあり得ます。なお、連結法人税の申告は親法人でまとめて行うため子法人での申告はありませんが、子法人においても一定の届出書や添付書類を所轄税務署に提出する必要があります。

以上のように、導入後の影響については十分に調査する必要はあるものの、グループ内で恒常的に赤字会社と黒字会社が存在する場合には節税となる可能性が大きい制度といえます。100%支配関係がある場合には一度は検討してみる価値があるといえるでしょう。

文:北川ワタル(公認会計士・税理士)/M&A Online編集部