なぜ起こる「不適正な企業価値評価」 プルータス・コンサルティング野口真人社長に聞く

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プルータス・コンサルティング野口真人社長

「自分たちに都合の良い結論を導くために、一部の理論をつまみ食いしているのではないか」

こんな疑問から法学、 経済学、金融経済学、会計学の研究者らや、企業のM&A担当者らが集まり、議論を重ねた結果をまとめた書籍「バリュエーションの理論と実務」が出版された。

企業価値評価を主業務とするプルータス・コンサルティング(東京都千代田区)が事務局となり、まとめ上げたもので、2021年12月の発売からわずか2カ月ほどで増刷が決まった。

そこで、同社の野口真人社長に企業価値評価の問題点や今後の課題、増刷の背景などについてお聞きした。

入れてはいけない調味料を使っている

-書籍にある「一部の理論をつまみ食いしている」という状況はなぜ生まれるのでしょうか。

結果ありきの評価にするために、いろんなところから、いいとこどりをしているケースがある。それぞれが独自の評価方法でやっているわけではなく、方法は決まっているのだが、細かいところで都合の良いようにしている。

例えば料理を作るのに、この調味料とこの調味料を入れて好きな味にしていると言った感じだ。この料理には、この調味料を入れてはダメというルールがあるにもかかわらず、そうした調味料を入れている。味が悪いだけならまだしも毒化していることもある。

-入れてはダメというルールに従わない人たちを排除することは難しいのでしょうか。

企業価値評価には資格などがなく、自身が評価の専門家だと言えばできる仕事なので、排除することは難しい。ただ、レピュテーション(評判)を考えると、そんなことをやっていて大丈夫かという疑問が生じる。生業として続けていこうとしている人はそういうことはしない。むしろ適正な評価をしないことをお願いしたい顧客がたくさんおり、不適切な評価をする人たちはそういう顧客の駆け込み寺になっているわけだ。

-となると、適正でない評価は今後も、なくならないということですね。

上場企業などのM&Aに関する評価は公開情報となるので、不適切な評価があれば株主などが訴えてくる。未上場企業の評価の結果は当事者間にしかわからないので、不適切な結果でも発覚しにくい。ただし、不正な評価については監査法人や税務署なども介入することがある。

困った時に調べる辞書的な存在に

プルータス・コンサルティング野口真人社長

-増刷となった「バリュエーションの理論と実務」は専門家向けで、あまり多くの人たちが手にするような書籍ではないように思われます。

背景にはM&Aが増え、これに関わる監査法人、M&A担当者、弁護士らの人数が増えていることがありそうだ。また当社で発行した「企業価値評価の実務Q&A」は12刷までいっている。困った時に調べる辞書的な内容なため、ずっと売れ続けているようで「バリュエーションの理論と実務」もそうしたニーズがあるのかも知れない。

-ところで、御社は裁判案件に関わったり、大きな案件で指名を受けるなど、社会的な評価は高いようですが…。

たまたま関わった裁判案件で、裁判所が我々の評価を否定しなかったことから、裁判になりそうな案件では、わが社に依頼しようという流れになったようだ。裁判案件や指名が多くなったのは、こうした積み重ねの結果だと思っている。

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文:M&A Online編集部

M&A Online編集部

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裁判などで争われるような論点を中心に、引用している理論の妥当性や、問題点を検証した「バリュエーション研究会」での議論を基に、企業価値評価の実務で争われる可能性のある論点を整理し、理論を踏まえた上で許容される範囲を示したのが本書だ。