「パイロット」と「三菱鉛筆」 業績の行方を分ける要因とは

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パイロットコーポレーション<7846>と三菱鉛筆<7976>の大手筆記具メーカーがそろって、2023年12月期に3期連続の増収営業増益を見込んでいる。

インバウンド(訪日外国人旅行者)による「お土産需要」が回復しつつあるのに加え、2023年5月8日に新型コロナウイルスが感染力の強い2類相当から最も感染力の弱い5類に変更されるなど明るい兆しが見え始めているためだ。

ただ、パイロットの2023年12月期の売上高には2023年1月に子会社化した手帳、ノート類など文具の製造、販売を手がけるマークスグループ・ホールディングス(東京都世田谷区)の売上高(2022年6月期は30億1400万円)が加わるため、この数字を単純に除くと計算上は減収となる。

両社はともに2024年12月期を最終年とする中期経営計画を策定しており、この中でM&Aや資本提携などに取り組む姿勢を見せている。この先、両社の業績の行方を分ける要因の一つとして、M&Aが浮上することなるかもしれない。

4期連続の増収営業増益も

パイロットは2020年12月期にコロナ禍の影響で筆記具の需要が落ち込み、16.0%の減収、26.1%の営業減益に陥った。翌年の2021年12月期はコロナ禍前の2019年12月期の水準にまでほぼ回復。その後堅調に推移し、2023年12月期は1.9%の増収、3.6%の営業増益を見込む。

三菱鉛筆もコロナ禍の2020年12月期に2ケタの減収営業減益となったあと、業績が回復、2023年12月期は2.2%の増収、2.8%の営業増益を見込む。

両社が取り組んでいる中期経営計画では、パイロットは最終年に売上高1180億円(前年度比2.6%増)、営業利益率18%以上を目標に掲げる。営業利益率が18%だと営業利益は212億円(同3.6%減)、営業利益率が19%だと営業利益は224億円(同1.8%増)となる。

一方、三菱鉛筆は2024年12月期に売上高710億円(同0.7%増)、営業利益116億円(同22.1%増)の4期連続の増収営業増益を目指す計画だ。パイロットが営業利益率18.65%以上を達成すると両社そろっての4期連続の増収営業増益となる。

パイロットが子会社化したマークスグループは、マークスグループ・ホールディングスと、手帳やノート、日記をはじめスマートフォンケースやバッグなどの革小物などを手がけるマークス(東京都世田谷区)、フランスを拠点とするマークスヨーロッパ(パリ)を合わせた3社から成る。

パイロットでは筆記具を中心とした商品群に、デザイン性や新規性に優れたマークスグループの商品を加え、非筆記具事業の拡大につなげる計画だ。マークスグループの2022年6月期の営業利益は1億2900万円。子会社化による相乗効果が現れれば、2024年12月期に4期連続の増収営業増益となる可能性はありそうだ。

M&Aと資本業務提携を模索

両社が過去10年間に適時開示したM&A案件は、パイロットがマークスグループを子会社化したこの1件に留まる。そうした状況の中、三菱鉛筆は中期経営計画の中でM&Aへの投資を明記した。

パイロットもM&Aという言葉は使っていないものの資本業務提携による新規事業の開拓を基本戦略の一つに上げている。すでに同社ではマークスグループを傘下に収めており、資本提携にM&Aが含まれることは実証済みだ。

M&Aによって両社の業績の行方に大きな違いが生じる可能性は低くはなさそうだ。

文:M&A Online