製造系派遣大手の「アウトソーシング」6件でトップ|2021年上期の企業別M&A

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日比谷公園から丸の内のビジネス街を望む

2021年上期(1~6月)の企業別のM&A件数(適時開示ベース)を集計したところ、製造系派遣大手のアウトソーシングが6件でトップだった。同社は前年に年間5件のM&Aを手がけたが、これを半年で上回った。2位は医療機器メーカーの朝日インテックの4件。ブリヂストン、アイカ工業、JKホールディングスなど9社が3件で続いた。

2021年上期のM&A件数は前年同期比26件増の447件と3年連続で増加し、上期としてリーマンショックの影響が広がる前の2008年(468件)以来13年ぶりの高水準となった。新型コロナウイルス感染症の流行拡大で一時的な停滞があったものの、昨年後半以降、増勢を保っている。

アウトソーシング、電気工事関連でも2件

上期中、複数(2件以上)のM&Aを発表した企業は57社あり、1社で6件を手がけたアウトソーシングが最も多かった。内訳は人材サービス関連4件、電気工事関連2件で、いずれも買収案件。海外案件が2件含まれ、豪州で政府機関や自治体向けにホワイトカラー人材を紹介・派遣するホライゾンワン・リクルートメント、グアムでは米軍向けに電気工事を行うカリフォルニア・パシフィック・テクニカル・サービシズを傘下に収めた。

アウトソーシングは事業安定化の一環として、主力の製造系とはサイクルの異なる分野や景気変動の影響を受けにくい公共系分野の人材サービス事業を国内外で拡充する方針を打ち出しており、この推進力となっているのがM&A戦略だ。

2020年に企業別のM&A件数が年間最多だったのはSHIFT、ジャパンエレベーターサービスホールディングス、ココカラファイン(今年10月からマツキヨココカラ&カンパニー)の各6件。アウトソーシングは下期入りした7月1日に米国の電気工事会社の買収を発表しており、今年のM&Aはすでに7件に上る。

朝日インテックは再起動、矢継ぎ早に4件

上期に件数2位の朝日インテックは昨年までM&Aに関して2年間のブランクがあったが、今年は3月から4月にかけて4件の買収を相次いで手がけた。医療機器の開発会社を米国で2社、国内で1社、イタリアでは販売代理店を傘下に収めた。買収金額は合わせて約116億円。

上期に3件のブリヂストンはうち2件が売却案件。なかでも、屋根材など建材製造の米国子会社ファイアストン・ビルディング・プロダクツ・カンパニーをスイスの建材大手ラファージュホルシムに約3500億円で売却する案件は、今年に入って日本企業がかかわるM&Aの金額ランキングで5位にあたる。

◎2021年上期(1~6月):企業別のM&A件数ランキング

6件 アウトソーシング
5件 なし
3件 9社=EPSホールディングス、JKホールディングス、アイカ工業、霞ヶ関キャピタル、廣済堂、中小企業ホールディングス(旧クレアホールディングス)、サンフロンティア不動産、デジタルハーツホールディングス、ブリヂストン

文:M&A Online編集部