【アウトソーシング】創業3年でM&Aを仕掛けたダイナミズム

alt
画像はイメージです。

M&Aを繰り返し海外へ進出。創業18年でグローバル企業へ

 1997年1月に設立した人材派遣業を営むアウトソーシング<2427>は、2015年5月現在では国内企業グループ15社、海外企業グループ16社からなるグローバル企業に成長を遂げている。14年12月期の売上高は、00年当時の9.4倍、経常利益は7.4倍、従業員数は8.3倍へと事業拡大した。

 この成長エンジンとなったのが、同社のM&Aによる企業買収である。

2000-2010年までの買収

 2000年、一般労働者派遣事業会社のアクセントを買収。06年には子会社を通じて自動車開発エンジニアの派遣を行うヤマコエンタープライズを孫会社化(翌月、子会社により吸収合併)。同年、広島県にて自動車用部品の生産請負業務を行うサンケイ工業を子会社化。08年には兵庫県で建設機械の製造請負などを行うヤストモを子会社化。同年、アウトソーシングを存続会社として同業で大阪証券取引所上場のフリーワークと合併。09年2月には、九州地区をはじめ全国 10カ所の営業拠点を有するテクノスマイルと資本業務提携。同年5月、全国に33カ所の営業拠点を有しフルキャストセントラルを子会社化(同年6月に株式を追加取得しアウトソーシングセントラルに商号変更)した上、さらに同年8月業績悪化により自己破産を申し立てたアイゼックス・アルファから、メーカーの設計開発向け技術者派遣業務を譲り受けた。同年11月には、電子機器・半導体分野および自動車分野を中心としたメーカーの研究・開発部門の請負・受託事業および同業務分野への技術者の派遣事業を行う聖翔を子会社化。同年12月には子会社を通じて技術者の採用コンサルティング事業を行うREVSONIC-ESを買収。10年3月には、子会社を通じて国内有数の半導体EDAベンダーであるアストロンを買収。同年9月には、輸送機器分野における生産アウトソーシングを手掛けるニッソーサービスを子会社化した。

2011-2014年までの買収

 2011年9月には技術系ITアウトソーシング企業のGIMを子会社化。同年11月には、インドネシア、タイ、ベトナムなど東アジアを中心にした 7 カ国に 10 社の子会社および関連会社を持ち、19 拠点におよぶ幅広い事業展開を行うOSインターナショナルを子会社化。12年1月にはIT・通信分野に特化したシステムエンジニアサービス事業を行うアスカ・クリエイションを子会社化。13年1月には、日本電気のグループ会社で、各種のシステムやネットワークの構築・導入支援・保守等を優秀なシステムエンジニアの派遣業務などとともに行うコンピュータシステム研究所を子会社化。13年9月には、高周波アナログ回路の設計・施策を行うサンシン電機およびマレーシアで日系メーカー向けの電子部品を量産するSANSHIN(マレーシア)を子会社化し、進出していなかったマレーシアに拠点を設ける。14年1月には、インドにおいて主に日系企業以外の外資系企業を中心に、製造系生産アウトソーシングとIT系アウトソーシングサービスを展開するALP社および DATACORE社を子会社化。14年3月にはる国内有数のITスクール「KENスクール」を展開するシンクスバンクを、同年5月にはWEBソリューションビジネスを展開するネクシム・コミュニケーションズをそれぞれ孫会社化。同年12月には、全国10拠点にて各種大型プロジェクトへ建設関連技術者を派遣する共同エンジニアリングの持株会社、KDEホールディングスを子会社化。同年12月にはタイに進出する多くの日系大手電機メーカーに対して電子部品の製造・加工サービスを提供するCELCO (タイ)を孫会社化した。

M&Aで業績は右肩上がりに

■アウトソーシングの売上高および経常利益の変遷

■アウトソーシングの売上高および従業員数の変遷

日本のものづくりの変化に合わせ、海外生産拠点を強化

 数々の企業、事業の買収を通じ国内での対応業種を増やすとともに、特に10年代からは海外での拠点、獲得を目的としたM&Aを実施している。

 その展開の背景には、日本のものづくりの変化がある。その一つが生産拠点のグローバル化(メーカーによる海外への生産移管)だ。そこで、国内では付加価値の高い自動車関連産業や、新たな2本の主産業として成長が見込まれるIT開発、需要拡大が継続する土木建設関連の技術を獲得。そして海外においては、増加の地域や日本メーカーの生産移管先への進出を強化・拡大している。

■アウトソーシングが行った主なM&A

年月 内容
2000.12 一般労働者派遣事業会社のアクセントを買収
2005.1 子会社のアクセントを吸収合併
2006.1 連結子会社であるアネブルがヤマコエンタープライズ(売上高4億円)の株式の100%を2000万円で取得し、買収。その翌月に吸収合併
2006.5 サンケイ工業(売上高14億円、営業利益5800万円)の全株式を3億5000万円で取得し、買収
2008.8 ヤストモ(売上高7億円、営業利益1億2600万円)の全株式を4億2000万円で取得し、買収
2008.10 リロケーションジャパンとジョイントベンチャー、ORJを設立(アウトソーシング出資比率90%)
2008.10 フリーワーク(売上高49億円、営業利益2億1000万円)を吸収合併合併比率アウトソーシング:フリーワーク=1:3
2009.2 テクノスマイル(売上高109億円)と業務・資本提携。1億2900万円を出資
2009.5 フルキャストセントラル(売上高56億円、営業利益△203百万円)の55.6%の株式を1000円で取得し子会社化
2009.6 連結子会社サクセススタッフを吸収合併
2009.6 フルキャストセントラルの株式を620円で追加取得し、出資比率が90%に。商号をアウトソーシングセントラルに変更
2009.8 アイゼックス・アルファ(売上高2億円)を300万円で事業譲り受するとともに、同社の子会社であるアールピーエム(売上高1億円)の全株式を600万円、同じくトライアングル(売上高0円)の全株式を200万円で取得し、買収
2009.11 聖翔(売上高67億円、営業利益△64百万円)の81.04%の株式を2億4700万円で取得し子会社化
2009.12 連結子会社エルゼクスがREVSONIC-ES(売上高2800万円、営業利益600万円)の60%の株式を6500万円で取得し子会社化
2010.3 連結子会社エルゼクスがアストロン(売上高3億円、営業利益70万円)の株式の70%を2800万円で取得し子会社化
2010.4 連結子会社聖翔が保有するわらべうた(売上高1億円)の全株式を1億1500万円で長谷川興産に譲渡
2010.5 連結子会社モルティを吸収合併
2010.5 アネブル、アウトソーシングセントラルおよびヤストモの3社が合併
2010.9 ニッソーサービス(売上高54億円、営業利益4億6700万円)の発行済み株式の10.16%を5億7900万円で取得し、買収(議決権保有割合は100%)
2010.12 連結子会社ミストラルサービス(売上高4億円)の保有全株式を代表取締役の小林勝氏らに3億8000万円で譲渡
2011.9 連結子会社アウトソーシングテクノロジーがエスプールの完全子会社であるGIM(売上高9億円、営業利益△185百万円)の全株式を2億2000万円で取得し、買収
2011.11 OGIホールディングスの孫会社のOSインターナショナル(売上高38億円、営業利益1億3600万円)の全株式を7億2500万円で取得し、買収
2012.1 アスカ・クリエイション(売上高10億円、営業利益3900万円)の自己株式を除く全株式を3億円で取得し買収
2012.3 連結子会社ニッソーサービス(以下、NS社)を吸収合併、連結子会社アウトソーシングセントラル(以下、OSCN社)の製造部門に係る事業を承継する会社分割(吸収分割)、およびOSCN社の研究・開発部門に係る事業を、連結子会社である株式会社アウトソーシングテクノロジー(以下、OST社)に承継させる会社分割(吸収分割)、並びに吸収合併に先立ちNS社の研究・開発部門に係る事業を、OST社に承継させる会社分割(吸収分割)を実施
2013.1 コンピュータシステム研究所(売上高16億円、営業利益3100万円)の株式の80.9%を9億9700万円で取得し、子会社化
2013.9 サンシン電機(売上高17億円、営業利益△1600万円)およびSANSHIN(マレーシア)の全株式を太平洋セメントから14億9700万円で取得し、買収
2013.11 連結子会社REVSONIC-ES を吸収合併
2014.1 ALP CONSULTING(売上高7億Rs、営業利益1100万Rs。以下、ALP社)および DATACORE TECHNOLOGIES PRIVATE(売上高170百万Rs、営業利益800万Rs。以下、DATACORE 社)の株式の51.1%を5億600万円で取得し、子会社化(ALP社が DATACORE 社の発行済株式のすべてを取得し子会社化した上で、アウトソーシングがALP社の株式を取得する)
2014.3 連結子会社アウトソーシングテクノロジーが持分法適用会社(所有割合19.4%)であるシンクスバンク(売上高4億円、営業利益△1億5500万円)の株式をアイビス・キャピタル・パートナーズから1株1円、計225円で追加取得するとともに無担保転換社債型新株予約権付社債を行使し、子会社化。出資比率が66.67%になる
2014.5 連結子会社アウトソーシングテクノロジーがネクシム・コミュニケーションズ(売上高1億円、営業利益4百万円)の全株式を5400万円で取得し買収
2014.12 共同エンジニアリング(売上高30億円、営業利益1億9500万円)の持株会社であるKDEホールディングスの全株式を14億2500万円で取得し買収
2014.12 子会社を通じてCELCO (タイ)(売上高5億6400万タイバーツ、営業利益△4700万タイバーツ。以下、CELCO THAILAND)の株式の90%を7000万円で取得し、孫会社化
2015.8 BLUEFIN RESOURCES(オーストラリア、売上高36億円)の持株会社の全株式を18億円にて取得、孫会社化
2015.8 NTRINSIC HOLDINS(イギリス、売上高39億円)およびNTRINSIC CONSULTING RESOURCES (売上高3億円)の株式をそれぞれ65.0%、合計12億円にて取得し、子会社化

 今後も環境変化に応じた事業構造の実現と、スピード感を持った規模感の拡大を図るため、M&A活用が見込まれる。

この記事は、企業の有価証券報告書などの開示資料、また新聞報道を基に、専門家の見解によってまとめたものです。

まとめ:M&A Online編集部