大学発ベンチャーの「起源」(73) coton

alt

coton(東京都港区)は、東京藝術大学発のベンチャー。主に音楽・音響芸術での最新テクノロジーと音楽認知や脳科学、感性科学などの研究成果を元に、芸術家と科学者、技術者がそれぞれの目線と発想で共創。音を通じて社会に貢献するソフトウェアやハードウェア、サービスを開発している。

2019年にサウンドデザイナーで作曲家の松尾謙二郎社長、同大教授の古川聖顧問、同大卒の濵野峻行CTO(最高技術責任者)が創業した。

現地に最適な音をAIで提供

創業当初から手掛けているのは、AI(人工知能)自動音楽生成ソリューションの「soundtope(サウンドトープ)」。時間帯や季節、天気、周囲の交通量や人流に応じて、現地に最適な音環境を提供する。TOKYU PLAZA GINZAの「ずかんミュージアム銀座」やよみうりランドの「ポケモンワンダー」などに導入された。

2022年4月に同大から自校の研究成果を活用したベンチャー企業を支援する「東京藝術大学発ベンチャー」の第2号に選ばれた。これにより同社は同大のサポートを受けたり大学の施設を利用ができたりするなど、同大の豊富なリソース(資源)にアクセス可能となった。

同8月に米マイクロソフトが提供するスタートアップ支援プログラム「Microsoft for Startups」に選ばれている。マイクロソフトからクラウドサービス「Azure」などのサポートを受け、「サウンドトープ」をはじめとする音環境構築ソリューションの開発やサービス展開に取り組む。

同11月には東京都デジタルサービス局の「FUN MORE TIME SHINJUKU 」に、「西新宿5G Sounding Cityプロジェクト」を出展。ビル検出技術と独自のサウンドシステムを掛け合わせた「Sounding Building」で、ビルがまるでオーケストラのように音楽を奏でる様子を来場者のスマートフォンを通じて体験できると注目された。

空間の音設計という新たな取り組みだけに、オフィスや工場、商業施設、テーマパーク、公共空間など幅広い分野で市場を開拓できそうだ。

文:M&A Online編集部