大学発ベンチャーの「起源」(63) LFOR

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LFOR(金沢市)は金沢大学発の健康茶ベンチャー。2022年2月に同大大学院博士課程2年の高野里紗最高経営責任者(CEO)が、漢方薬として用いられる植物で作る紅茶を健康増進に役立てるために立ち上げた。きっかけとなったのは佐々木陽平同大学医薬保険研究域薬学系教授から、漢方の国産化に取り組む神子清水薬草組合(白山市)が栽培する「トウキ」を紹介されたこと。

薬草を有効活用した紅茶で地域おこしにも貢献

トウキは2014年から同組合が地元の耕作放棄地で栽培してきた。しかし、海外から輸入される安い輸入薬草との価格競争に巻き込まれて採算がとれない状況が続いている。トウキは根の部分が冷え性や生理不順などを改善する漢方薬に使われるが、栄養のある葉や茎は捨てられていた。

LFORはそこに目をつけた。国産紅茶の普及や研究に取り組んできた著名な和紅茶ブレンダー​​岡本啓和紅茶専門店 紅葉くれは~代表をパートナーに迎え、捨てられていた葉や茎をナツメやシナモンの葉と混ぜてトウキ特有の香りで体が温まるスパイシーな紅茶の開発に取り組んだ。

こうして誕生したのが「百草(ももくさ)紅茶」だ。トウキの根を漢方薬に、利用されていなかった葉や茎を紅茶に加工することで栽培農家の増収を図り、過疎に悩む中山間地の活性化に役立てる。

百草紅茶は春夏秋冬の四季をテーマに商品化した。「冬」はトウキ、「春」はミカンの皮を乾燥させた陳皮(ちんぴ)、「夏」は柑橘系、「秋」は朝鮮人参などを使い、年間を通じて新鮮な紅茶を供給する。

同社を立ち上げたメンバーで結成した金沢大チームの「真の健康を実現する共創ビジネス~日常に寄り添う漢方の価値提案~」が、2021年度「キャンパスベンチャーグランプリ(cvg)中部大会」で日刊工業新聞社賞を受賞した。LFORのビジネスモデルに対する評価は高い。

2022年7月には化粧品・スキンケア商品を手掛けるアルビオン(東京都中央区)との共同研究を始めた。アルビオンは原料や素材にこだわっており、LFORの国産生薬を利用して化粧品の高付加価値化を目指す。

併せてアルビオンが展開する化粧品と独自にセレクトした雑貨を販売するセレクトコスメショップ「アルビオン ドレッサー」で、LFORの「百草紅茶」を販売している。

文:M&A Online編集部