大学発ベンチャーの「起源」(52)  ごきっちょー

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ごきっちょー(東京都板橋区)は大東文化大学発の畜産ベンチャー。2021年8月に、同大3年生だった富田隼輔代表取締役と牛込ことみ代表取締役が創業した。まだ珍しい都市型畜産事業の実現を目指す。社名はウズラの鳴き声が「御吉兆(ごきっちょー)」と聴こえることからとった。

毎年経営者が入れ替わり、起業家を養成

同社が提供するウズラの卵は100g当たり350㎍と、鶏卵の2倍以上のビタミンAが含まれている。ビタミンAは皮膚や粘膜の健康を保つために必要で、粘膜のダメージを回復したり免疫力を高めたりする効果があるという。強い抗酸化作用もあり、アンチエイジング効果も期待できそうだ。

商品はウズラ卵を材料にしたなめらかな触感と濃厚な味が自慢の「しあわせたっぷりん」(420円)や、栄養価の高いウズラ卵をふんだんに使用したサンドイッチ(420〜480円)など。板橋区大山町のシェアキッチン「かめやキッチン」で販売している。「しあわせたっぷりん」はインターネット通信販売も展開中だ。

学生たちがウズラ卵をふんだんに使った食品を販売する(同社ホームページより)

同社は①板橋区にウズラ農場を作り、新たな雇用を創出する②自分たちで育てたうずらで板橋区の新たな特産を作る③板橋の新たな観光地として、魅力を発信する④子どもたちに食育の場を提供するーを目標として掲げている。

開設を予定しているウズラ農場は、板橋区内の倉庫や納屋、廃工場などの空き物件内に設置する見通し。農場では障がい者や普通の職場になじめない人材を積極的に採用して、「どんな人でも前向きに暮らせる社会」づくりに貢献する。社会課題を解決する「ソーシャル・ビジネス」の側面も持つ。

ユニークなのは、代表取締役の任期が1年間と決まっていること。毎年、新大学3年生が経営を引き継ぐ仕組みで、4月からは門田凜太郎氏、村尾絢汰氏、田島しおん氏の3人が新たな代表取締役に就任する予定。3月26日14時から板橋区立小豆沢体育館で開かれる「横浜エクセレンス 対 しながわシティ バスケットボールクラブ」の試合会場内に開設する特販ブースで新経営陣が「しあわせたっぷりん」を販売する。

毎年、新たな学生が同社の経営に携わることで起業家を養成する「インキュベーター(孵卵器)」としての役割も果たしそうだ。

文:M&A Online編集部